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首筋にキス



2019/05/23『キスの日』SS
固定創作主的描写あり。

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綺麗だなぁ。なんて。
闇夜の中で死体に囲まれて、自らのした事を悔い憂いていた幼馴染を見て、俺は漠然とそんなことを思った。周りからは不謹慎とか、そんなこと言われるのかもしれないけど、実際問題俺はそう思ったんだからしょうがない。それでいて、どこか儚げだとも思った。そのまま、星屑の中へと消えていってしまうんじゃないかって。一瞬怖くてたまらなくなった。
だから俺は、そうして沈みこもうとしていた桜の腕を掴んだんだ。

「……なんだ」

桜は一瞬驚いたような顔をしたあと、いつものように自分を律した顔をして、口を開いた。今日はなんだか、大分キてる。

「な、桜。俺、桜のこと、離す気ねーから。」

「は?」

握りしめた手そのままに、桜を引き寄せる。返り血とか、そんなの関係ない。俺だって汚れてる。桜にどこにも行って欲しくなくて、ぎゅうぎゅうに腕の中に閉じ込める。暖かいのに、その手は夜の空気みたいに冷たくて。ふわりと香った桜の香りすらも、どこか嘘くさいなんて、思ってしまった。

「桜は俺が守るから。そばに居るから。」

暖かく、優しく抱き返してくれている桜の首元に俺は鼻梁を埋め、深く吸った。桜の匂い。温もり。きっと今の桜は、なんとも言えない困った顔をしてるに違いない。いい加減そろそろ諦めてくれたっていいのに。俺はもう戻れないし戻る気もないんだから。
顔を埋めていたその首筋に、触れるだけのキスをする。でもそれだけじゃ足りなくなって、優しくゆっくりと、同じ所に歯を立てたら、流石に一発殴られた。良かったいつもの桜だ。


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