恋連鎖 | ナノ

三人で仲良く校庭を出て体育館横を通り、廊下を突きぬけて保健室へ。

…どんだけ長いのよ。途中、他の学年の集団のせいで足止めされたりして結構な時間を食ってしまった。あれ、保健委員の集合って何時まで?それも聞かされてないから余計不安になる。っていうか今何時ですか、次のテニスの試合には間に合うのか。

ぐるぐる頭の中で不安が駆け巡ると同時に開かれる保健室。


「じゃあ俺はここから別行動な。……喰われんなよ」

「あ、安心して下さい!!そんな事は断じて…」

「本当に?」
「う」

あたしにしか聞こえない声で銀ちゃんは念入りに何度も聞いてくる。その表情はと言えば捨てられそうな子犬みたいで可愛くて、あたしの中の母性がうずくうずく。
言葉に詰まるともっと不安そうにあたしを見た。

だって、男の人の力って強いんだよ!? 銀ちゃんに分かってたまるものですか、あたしの辛さを!


「……大丈夫、何かあったらすぐ先生の所に行きますから」

「…分かった」

肯定してないけれど、そう言ったら銀ちゃんが納得してくれたから結果オーライ。
それにしても銀ちゃんはちょっと心配性になりすぎ。独占欲強いのは…別に、嫌いじゃ、ないけど、強すぎる人は苦手だからきっちり銀ちゃんに言ってやらなきゃ。

「何先生と抜け駆けしてんのよ!」ってさっちゃんさんが大きな声であたしを呼ぶ。それは誤解を生むからさっちゃんさん!カッと顔が熱くなるのを感じると同時に銀ちゃんの方に目を向ければ、彼は苦笑していた。
…そうだよね、ばれちゃいけないから、ここはサラッと受け流して戻ろう。銀ちゃんとは何かあったら、ってことで今はお預け。

「じゃあな」

「うん」

すぐに保健室に入る。何人かの保健委員のみなさんがあたしを見た。

うう、ちょっと視線が辛い…。そんな矢先


「全員そろったので始めます。えーまず、クラスメイトに怪我人が出た場合の対処法なのですが、そちらのプリントを見て下さい」


あ、それもらってない。そう思ったら話し始めた委員長さんらしき方から仕方なーくプリントを渡されたため、素直に受け取った。

そんな顔しなくても…。ちょっと傷ついちゃったじゃない。



委員長さんは話を続ける。
けれど話の内容は単純で、まさに保健委員らしい活動内容だった。

クラス内に怪我人が出たら、次に渡す救急セットで応急処置をしてから、異常があると思われる場合は保健委員がその怪我人を保健室まで連れて来い、というもの。
話通り救急セットを受け取った。応急処置って心得ないけど大丈夫かな。鼻血が出た場合は顔をどっちに向けさせればいいんだっけ。後でさっちゃんさんに聞いておこう。

「最後に高杉先生、何かありますか」

ていうか今更なんだけどさ、こういうのって球技大会始まる前からやるものじゃないの?
昨日大けがした怪我人が現れてたらどうしてたのよ。…いなかったけどさぁ、しいて言えばあたしがちょっと危ない目に遭いそうだったけどさぁ。


「結聞いてんのか。お前は今からちょっと残って俺の手伝いするんだぜ、おい」

「―――へ?」


我に返ると高杉先生と他の生徒さんがこちらをじーっと見ていた。

いけない、考え事しすぎて頭の中に何も入ってなかった。え、高杉先生は今なんと?
『残れ』?

「他の奴らはソレ持ってったら早く戻れ、次の競技に間に合うようにな」

高杉先生がしっしと生徒達を追い出している。
あたしは状況がハッキりとつかめないまま…。


「……結、こっちに来い」


ごめんなさい銀ちゃん。高杉先生と二人っきりになってしまいました。あたしは何だか嫌な予感がします。




***





「ふっぅぇっ……ぐすっ」


どうして、どうしてこんな事になった。


「何であたしが運ばなきゃいけないのよォォォォォオ!!!」


手には大量の紙束と救急セット。こんなものどこに運ぶんだ、と聞いたら「体育棟」と高杉先生はアッサリと答えて、それ以降あたしを見てはくれませんでした。泣いていいですか。

松平先生に渡すものがあったらしいんだけれども(それが紙束の正体なんだけれども)これから貧血で倒れた女子生徒を診なきゃいけないから代わりに行け、という事であたしが派遣されているわけです。

ついでに言うと、この大量の救急セットは先ほどさっちゃんさんが忘れて行ったものだったり、あの時渡せなかった人の分だったりとざっと数えてセットで言えば5個。どうしてか弱い女の子に頼むのかなぁ。人使いあらいよ。普通、なんとなくあたしを睨んできた眼鏡委員長に任せるものでしょうこれ。


しかしそんな愚痴も空しく空に浮かんで…


ハァっと大きなため息をついて、体育棟の体育教官室まで来ればひとまず荷物を置いて

「失礼します」

か細い声で扉を開けた。





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