恋連鎖 | ナノ
「「キス」」
「うるさい!ってか何でそんなにピンピンしてるのよ!!!」
予想通り、二人は帰って来た瞬間にそう言ってきた。
っていうか逃げればよかった!結の馬鹿!!
「お前とは体のつくりが違うからねィ。こっちはあんくらいの運動量なんてへでもねェや」
「とりあえず約束は約束だろ。勿論口だからな」
「ひっ……」
思わず悲鳴を上げるところだった。っていうか、トシがなんだか今日は強気だ。総悟と一緒だから何かの作用でそうなっているのだろうか。ヘタレのくせに…!「何か言ったか?」「いいえ何もっ」
タオルで汗を拭いてグイッと水を飲み干した二人は、そのままあたしの方に顔を近づける。まるでいつでもいいですよ、とでも言うように。
っていうかここでやれってか?
近藤さんがまたお妙ちゃんに蹴り飛ばされてる目の前でやれってか?冗談でしょ。大体まだ貴方方二人のファンクラブの女子の皆さんがこちらを見てるっつーのに…こんなところでキスなんてしたら殺される。確実に。話しているだけでも視線が辛いのに…!
でもこの二人は無自覚なのだ。
自分にファンクラブがある、だなんて知らないのだろう。鈍感なのか、それとも女子たちの隠ぺいが上手いのか…。
「ここじゃ、無理」
それだけ言ったら「恥ずかしいんだろ?」と総悟にニヤニヤされた。
違うっつーの!
「だ、大体人がいるっつーのに…それに」
こうなったら奥の手
「せ、先生が好きなんですよ、私は!二人にキスなんて簡単にできないの!!」
なるべく小さい声で、それでも一生懸命主張するように言う。
すると二人が呆気にとられたようにまるい目になると、次にクツクツと喉を鳴らして笑った。
何がおかしい!
「んなのとっくに知ってるっつーの。それ承知の上で頼んでるに決まってるだろ」
「やっぱアンタ馬鹿なんですかィ?」
「くぅ……」
見透かされてる。
その上余裕な2人を見ていたら、もう言い返す言葉がなくなった。
それなら、意地でもキスしてやんない!そう思って下を俯く。
すると、総悟の方から腕を掴んで、次に耳元で「結」と囁かれると
公衆の面前でキスされたのであった。
「……!」
キャアァァアアっと女子たちから声が上がる。
うわ、殺される、少なくとも総悟ファンの皆さまから殺される。
「総悟こそ抜け駆けしてんじゃねーか」
「いつの話ですかィ?土方さん」
そんな2人のやり取りは一瞬で、その次にトシに口づけられる。また女子たちの声が上がる。
「んっ、ちょ、やぁっ!」
トシからは舌を入れられそうになった。だから恥ずかしくなって頑張って押し返す。
ファンクラブの皆様ごめんなさい。私は悪くないんです。悪いのはこいつらなんです。だから恨まないで、本当…あたし、メンタル弱いから。
「ぅっ…」
とうとう結は泣きだしてしまった。
それを見て思考がストップした土方と総悟は、固まるとそのまま謝罪の言葉を慌てて投げかける。
しかしポロポロと静かに雫がこぼれていく結は「やだって言ったのにぃ…」と呟くばかり。許してくれないらしい。
「何結を泣かしてるアルかァァァァアア!!!」
「貴様らただじゃ済まさないぞ!!!」
そうこうしているうちに、神楽と九兵衛からとび蹴りを喰わされたのは、言うまでもない。