季節物



土佐弁あんまり自信ないです!それでも良かったらどうぞっ!




「アッハッハッハー。
 要はもうちっと仕事があるということじゃな。さっさと片付けろブチ殺すぞクソ女」

「わしだってこのままくるめたかったけんど、おんしがサボってたせいでこうして溜まっとるんじゃ。
 つべこべ言わず働けボケ。」


「陸奥一人で片付ければいいじゃろ」

「ほんなら頑張って〜」


ヒラシラと手を振って部屋から出て行った陸奥さん。

部屋には坂本さんとあたしだけになった。


「アイツ無視ばしよって…」

「まぁ、今回のは比較的やりやすい仕事だって言ってましたよ。
 それに、こうしてしばらく宇宙の景色を眺めているのも素敵じゃないですか」

「もう飽きちょったぜよ」

「あはは。羨ましいなぁ…」

お茶をとん、と置いて「それじゃあ私はここで」と部屋を出ようとする。

が、坂本さんはあたしの腕をつかんでそのまま自分の方へ引き寄せた。


「…あれ、何やってるんですか坂本さん」

「いんや、しばらくおんしと宇宙でも眺めようかなぁ〜なんて」


キュッとあたしの体を抱きしめて、そのまま腰を下ろすと、目の前には窓の外の宇宙が輝いて見えた。


あたしは、この船には彼が攘夷戦争から抜けて始めた時からの付き合いで、坂本さんとも多分長い付き合いだ。

…まぁ、こういう事をしているけれども別に彼女とかそういうのでは無いと思うんだけど……ハッキリしていなくて

どちらかというと妹みたいなものだ。

あたしは坂本さんよりも5つ年下だし。


「なぁ…」

「はい」

「おんしに聞きたいことばあったぜよ」

「何ですか?」


今も悠々と漂い続ける景色の中、そこから目を話して坂本さんの方を振り返ると、彼もあたしを真っ直ぐ見つめていた。

サングラスがないから変に意識してしまう。


「おんしゃ何でわしと一緒に宇宙に来たがか?」

「………」


改めて考えると、「何でだろう」と考え込んでしまう。


正直もう一緒にいるのが習慣のようだったから、最初の事なんて全く気にしていなかった。


「…多分」


でもきっと、結局はこういうことだろう。


「坂本さんが好きだからかなぁー」


これは本心からそう思える事で、躊躇なく言える。

坂本さんは少し顔を赤くした。

しばらくあたしから目をそらすと
「そうか…」
と呟いて、また窓の外を眺めた。


ちょっとだけ、坂本さんの抱きしめる力が強まったかもしれない。



「…坂本さんは何で私にこんなに親切にしてくださるんですか?」


今度はあたしから質問してみる。

「んー…何でじゃろうなー…」

坂本さんも少し言葉を濁した。
やっぱりハッキリしないから、こういう関係が続いているんだと思う。

そうですか、と言おうと思った瞬間、坂本さんは

「ちゅーても、本当はわしも…おんしの事が好きやき、一緒におるんにかぁーらん」

「……そうですか」


自分の頬がちょっとだけ熱くなる。



「…私たち両思いですねぇ」

「そうじゃきのぅ」


何の音もしない、ここに聞こえるのは二人の心臓の音と呼吸音だけ。


あたし達はただボーッと…いつものように二人で宇宙を眺めた。


何も会話をしていないのにこうして二人でくっつき合っているだけで幸せなんだ。


―――…やっぱり、あたし坂本さんの事好きなんだ。


いろいろ考えてみれば、純粋な『恋心』としての『好き』という気持ちに気づくのだ。



「…坂本さん、地球に戻ったら何したいですか?」


「んー……そうじゃな、おりょうちゃんに会いたいのぅ!」


「あぁ…あの人ですね。また怪我が増えちゃいますよ」


「それでも会いとうもんは会いたい」


「お好きなんですねぇ」


ふふふっと笑うと、不思議そうに顔をのぞかせて「嫌じゃないがか?」と尋ねてくる。


「何がですか?………………あぁ」


一瞬本当に分からなかったけれど、話の流れからして「嫉妬してないのか?」という事だろう。

正直な事を言うと


「いや、全く嫌じゃないですよ」


って感じ。


「おんしゃわしの事を好きがやないがか?」


逆に心配そうに言ってくる坂本さん。
このままじゃ別の意味に捉えられちゃうなぁ…と思ったあたしは、そのまま自分の正直な気持ちを伝えてみた。


「私は坂本さんが幸せそうに笑ってくれたらそれでいいんですよ。
そりゃあ、もし坂本さんが私以外の人に本気で惚れてしまったら結構ショックを受けると思うんですけど…
でも、自分の勝手な都合で坂本さんを束縛したくないですから。坂本さんには…自由に飛び回ってほしいから。それでいいんです」


しばらく沈黙が続いた後、頭の上にふんわりと暖かいぬくもりが伝わった。


しばらくして坂本さんの手だという事に気づく。


「おんしゃーいいこじゃ。
 わし一人で独占するがは勿体無い」


まるで子ども扱いするように頭をわしゃわしゃと撫でる。

「独占されてたんですね」

そう言って笑えば

「おう、今までもこれからもじゃき」

と、まるで誓いの言葉のような事を言ってくれた。



それから坂本さんが仕事に戻るまで、あたしは彼と二人きりで宇宙を満喫したのであった。









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