季節物



「お誕生日おめでとう」


そんな言葉を一日中いろんな人に言われた。

その上、たくさんの人からプレゼントまで貰った。


チクショーこれ全員にそれぞれに返せってか? 誰もそんなこと言ってなかったけどきっとそうなのだろう。

なんて自分一人で決め付ける。

…まぁ、きっとこれは日本人の性であって、否定もできないものだった。


あたしはいつものようにかぶき町をウロウロ歩き回る。


いつもと違うのは両手いっぱいに物を持っている事。

周りから見たら「何? あの子一人であんなに買ったの?」と変な風に見えるんだろうなーと考える。

とりあえずあたしは、その荷物を置くために一軒の建物に入った。


「銀ちゃーん」


そう呼べば、奥から彼はどこかダルそうに玄関までやって来てくれる。

「うおっどうしたんだ? その荷物…」

「いろんな人から貰った。」


ちょっと微笑んで言うと銀ちゃんもフッと幸せそうに笑ってくれた。


「まぁいいや。とりあえず持ってくからよ、上がってきな」


荷物から解放されると、一気に自分に脱力感が押し寄せた。

大体30分くらいあたしはずーっと重い荷物を持って歩いていたのだから当然だろう。

彼が居間に行って荷物を置く音がする。
あたしはとにかく疲れたため、玄関で座り込んでしまった。


しばらくしてもあたしが居間に来ないため不思議に思っただろう銀ちゃんが、もう一度襖を開けて玄関を覗く。



「…何やってんの?」


「銀ちゃん抱っこ―――」


まるで駄々をこねる子供のように、両手を広げてせがむ。

ヤレヤレといった感じで彼はあたしをお姫様抱っこしてくれた。


「まぁ誕生日だから今日くらいはいっかねェ」

「アレ、銀ちゃん覚えてくれてたんだ」

「当たり前だろ? 大事な大事な彼女の誕生日をこの俺が忘れると思う?」

「…だって、何も言ってくれなかったじゃん」

「あんなに疲れてる状態で言ったって反応薄いでしょ? 多分。
だからこういう風にくっつくまで待ってたって訳よ。俺だって本当は今日になった瞬間に言いたかったのにさー」


あたしをソファに下ろすと、そんな風にサラサラとまるで予定していたかのような速さで言う銀ちゃんの言葉に、あたしは少々頬を染める。



「で、誰に一番最初におめでとうって言ってもらったの?」

一瞬銀ちゃんの声音が妙に鋭くなる。

あれ、目が笑って無くない?


「…今日になった瞬間に……沖田君に」

「分かった。じゃあ明日にでも奴の口を聞けなくしてやろう」

「銀ちゃんそれは流石にやめてあげて」


あたしが突っ込むと、銀ちゃんはヘラッと笑って「冗談だって」と言う。

正直彼の嘘はいつもは見抜け安いため、その言葉すら本当かどうか迷った。


まぁ、信じるとしよう。



「お誕生日おめでとう。これからもよろしくな」


不意打ちで、彼はそう言うと触れるだけの口付けをした。


「……全く」



きっと顔が真っ赤のあたしは、そう呟くと彼をギュッと抱きしめた。


銀ちゃんはそのまま抱きしめ返して、子供をあやすかのように頭を撫でる。



プレゼントとか形になるものは何もくれなかったけれど、この瞬間だけで充分だ。




―――やっぱり銀ちゃんからの言葉が一番嬉しいよ。









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