できた、という高らかな声が聞こえてきたのは、
その日の太陽が一番高い時を過ぎてからだった。
「マイキー!」
突然背後から呼ばれた赤毛の少年の背中が跳ねた。
振り返るとそこに居たのはツインテールの少女。
何かを隠すように手を背中で組み、勝ち気な目で少年を見つめている。
「姫子ちゃん、どうしたの?」
少女…姫子の姿を確認したマイキーがにっこりと微笑む。
「マイキー、今日は何の日か御存知かしら?」
「え?」
「今日!2月14日!!」
首を捻り考えるマイキーをまくし立てる様に声を弾ませる姫子。
「えーと…」
誰かの誕生日…何かのお祝い…
ああでもないこうでもないと思考を巡らす。
「ああ、もういいわよ!これ!」
はい!と勢いよくマイキーの手に渡されたのは、
両手で持てる程度の小さな赤い箱。
「これって…」
「まだわからないの!?バレンタインよバレンタイン!」
箱を離した事で自由になった手を組み、そっぽを向く。
「あ、そっかあ。今日ってバレンタインだっけ」
渡された可愛らしい箱を見つめる顔が明るく、仄かに赤くなった。
「えっと…開けてみていい?」
あちらを向いたまま応えない態度を肯定と取り、箱をそろりと開く。
そこには、不格好な形をした焼き菓子。
「わ、クッキー…これってもしかして、手作り?」
「…そうよ、私がわざわざ一から作ったのよ!
ありがたく受け取りなさい!」
勢いよくこちらに向き直り、箱の中身を指差しての強い口調。
しかしよく見ると、そんな彼女の腕には薄い赤い火傷の跡。
また目の下にもうっすらとクマができていた。
慣れない行為の為に早起きして、何度も作り直したのであろう。
「ありがとう姫子ちゃん、凄く嬉しいよ」
姫子の顔が、箱の色に負けない位の赤に染まった。
「マイキー、その箱は?」
「バレンタインで貰ったの」
「ほう…」
「凄くおいしいクッキーなんだ!」
「そうか…良かったな」
バレンタイン突発文。マイ姫。
通りすがり嬢の影響で大好きなんだマイ姫。
姫子ちゃんが早起きして頑張って何回も焼いてたら可愛いなと思った。
勿論失敗作は桜田達が食べますよ(`・ω・´)
最後の会話は趣味でしかない。お察し下さい。←
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