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月島静雄×折原六臂
大学生・自傷ネタ





俺と同じ顔をした変態が『人ラブ!』なんて叫んでるけど、生憎俺は愛してない。
愛なんて不確定だし所詮一方通行だろ?
毎日俺を見るたび、好きですなんて言ってくるアイツも結局自分が愛されるなら誰でも良かったんだ。
 

月島が告られてた。
放課後の教室で。青春ドラマかっつーの。
「月島くん!!」
女が泣きながら抱きつくと月島は背中に手を回した。
その先の月島の言葉は聞きたくないし、同じ空気を吸うのも嫌でその場から離れた。

「あの、折原くん…」
「ん?なぁに?」
昇降口で見知らぬ女に引き留められる。
「いま時間いいかな?」
「うん。大丈夫」
笑顔を貼り付けて近くの空き教室に入った。
本当はこんな女どうでもいいし、どうせ話の内容は分かってる。俺は青春ドラマに興味ない。
「私、折原くんのこと‥っん」
ほら、やっぱり。最後まで聞くのも面倒だからキスで塞ぐ。
「え、あ‥」
頬を染めて俺の言葉に期待する女に、笑顔の仮面を着けたまま答える。
「あは!名前も知らない君に好かれるとか、気持ち悪いことこの上ないね。キスも下手だし、塗りたくった口紅も不快だし・・・」
ハンカチで口を拭っていると、パシン!と小気味良い音が響いた。
意外に強い平手打ちに胸の痛みが和らいだ。

「ふふ‥ありがと」
泣きながら走り去った女の後ろ姿に礼を言ってナイフを出す。
「…っ!」
左腕に浅くナイフを滑らせば鮮血が零れた。チリッとした痛みに要らぬ感情が流されて気分良い。涙が出るのは血が滴る腕のせい。

気が済むまで切り刻んで家に帰る。
ベッドに入ると疼く痛みの虚しさに、これが最後って決めて一際深く突き刺した。


全身怠くて本当は休みたかったけど一人で居た方が気が滅入るから大学へ行った。
「顔色悪いよ。大丈夫?」
「目敏いね、新羅。大丈夫。眠れなかっただけ」
やっぱサボろうと思って体を反転させたら視界が歪む。自分でもぐらつくのが分かったところで意識が切れた。


目が覚めたら白い天井と消毒液の匂い。
酷い頭痛に身体を起こした。携帯を見れば昼前。新羅から「癖になるからやめなよ」と短いメールが入っていた。
左腕の包帯が綺麗に巻き直されている。真っ白な包帯が俺を咎めてるように思えて、ズボンからナイフを出して振り下ろす。

「ダメです」
思った筈の痛みがこなくて顔をあげると、月島が右手を掴んでた。
「‥ぁ、ゲホッ」
瞬間に胃液がこみ上げて堪らずえづいた。
「六臂さん!」
ナイフを取り上げた月島が背中に触れる。
「さ、触るな!!」
あの女に触れた同じ手で。
呼吸が乱れて、心音は異常に速くて、身体中が熱くて、涙が溢れた。
上手く息できないまま暴れてたら月島に抱き締められた。
「や、めて…離して」
口に胃液が溜まる。
「離しません」
体を引き剥がそうにも月島の馬鹿力には適わない。
「どういうつもり?」
「六臂さんこそ!!こんなの…」
片方の手が包帯を優しく撫でる。そしたら月島が触れた所から痛みが消えた。侵蝕されてるみたいで心地良いなんて、気持ち悪くて涙が止まらない。
「つき、しま、には、かん‥け、ない」
「あります」
俺の頭を胸に押し付けたまま、左手に指を絡ませる。
「俺は貴方のそんな姿見たくない。何があったんですか?誰かが貴方をそういう風にしたなら、俺が守ります。だからもう、自分を傷つけないで下さい」
「じゃあ死んで」
自分でも驚くほど冷たい。
「・・・・・・六臂さん」
呟いた月島は俺を離して絡めた指も解いた。
離れた指に永遠に触れない気がして絶望にまた吐いた。
「新羅さん呼んできます」
行かないで、の一言が言えない。
月島が居なくなると左腕が燃えるように熱くて爪を立てる。
滲んだ血と痛みに安心して眼を閉じた。




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