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「傷」のにょた版続編
乙女臨也






シズちゃんと1ヶ月以上喧嘩してない。
喧嘩どころか殴られたのだって、女になった日の晩に1回だけ。
もう残る傷は1つも無い。
すんごく痛いし殴られたい訳じゃないけど、まっさらな身体は不安。シズちゃんが離れちゃう気がする。

「シズちゃん、物足りない」
仕事から帰ってきたシズちゃんに訴える。
「なんだ?毎晩のアレじゃ不満か?」
「いやセックスは満足してるよ。むしろお腹いっぱい。俺が言ってるのは、喧嘩」
「は?」
「もう1ヶ月も喧嘩してないの。見て、俺の身体。痣1つない」
ほらっ!とパーカーをめくっておなかを見せる。
「良かったじゃねぇか」
綺麗だな。って俺のおなかを撫でた。ちょっと格好良くて悔しい。
「良くない!俺にとってはシズちゃんと喧嘩するのがルーチンなの!日常なの!」
「いや、それちょっと前に解決したろ。喧嘩しなくたって、傷なんかなくたって俺達は一緒に居られるじゃねーか」
「でも不安だよ…」
「仕事定時にアガって、晩飯の材料買って帰ってくる俺の何処に不安あんだよ」
そうなのだ。今シズちゃんとは同棲状態。
外に出れない俺の代わりに買い物してくれて、新宿から仕事へ通ってくれてるのだ。頼んでないけど自然にそうなった。
そんなイチャラブ状態で不安になる要素は無い…はず。
でもイケメンのシズちゃんが、なんで俺と居るかは謎で。
昔はシズちゃんの世界に俺しかいなかったから俺一択だった。でも今は可愛い後輩やら幼女やらに囲まれて、社交的に生きてるわけだ。
正直、顔以外に良いところなんてない俺といる理由なくないか?まぁ性格直すつもりないけど。
一日中部屋にいるせいか、そんなことばっか考えて気が滅入ってくる。
なんか女になってから情緒不安定すぎない?今度新羅に相談しよ。

「馬鹿なこと言ってねぇで座れよ。映画始まんぞ」
下を向いてぐるぐる考え込んでた俺の手をシズちゃんがひっぱる。
「…うん」
シズちゃんの横へ座ると、腰に手を回して密着するように抱き寄せられる。
シズちゃんの体温が伝わってきて幸せな気持ち。
だからこそ不安なんだ。
これを失うのが怖い。
ハーフパンツを少しめくって太股の傷痕を見る。
この傷が随分昔のように感じた。

そっか。理由が無いなら作ればいい。
最近俺も弛んでたね。簡単なことを忘れてたよ。
シズちゃんて結構独占欲強そうだもんな。
ふふ!楽しみだなぁ…シズちゃんの焦る顔!




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