燃え焚く灰はチリリと橙を帯びて飛粉していた。バチバチという音が耳に垂れ流れる。思ったよりも死臭のしない煙たい臭いが室内に充満していた。

今日、要害堅固が死んだ。

死因は、刺殺。
巨大な鳥の嘴のような刃物で心臓を一突き。一瞬で息を引き取る形となった。
買い出しの帰りが遅いことを案じた《ギルド》のメンバーが探しに行くと、道で倒れていたらしい。既に、死んでいた。

今は《ギルド》の地下で火葬を行っている。本来なら外でするべきことなのだが、切磋琢磨の声によりそれは取やめられた。


奴隷狩りとは違う勢力が、俺達を狙っている可能性がある。


外で煙をあげれば、場所を特定されてしまう。折角ビルディングが建ち並ぶ奥という、絶好の隠れみのを得ているのだから、不用意には明るみにしたくなかった。

そこで、要害堅固の死体の火葬は地下で細々と行われた。

泣き出す者。
虚ろな者。
目をつぶって開かない者。
色んな人間がいた。
みんな、白い百合の花を火葬に焼べながら何かを呟いている。
俺も百合を投げ入れて、今は亡き要害堅固に言葉を授けた。


「ありがとう」


守ってくれて。

――――――バチバチッと、火が強く音を立てた。



*****



「大丈夫?」


俺は切磋琢磨に話し掛けた。やつは燃え盛る火をじっと見つめていた。膝を畳んで尻をついて、無表情で。
俺が琢磨の隣に座ると、やつは頭を俺の肩に預けてきた。


「……魚」
「……なに」
「助けたやつを殺すのって、どんな気分なんだろうな」


何やら意味のわからないことを呟いた。最初は、アタマがイカれちゃったんじゃないかと思ったんだけど、どうやらそうじゃないらしい。確かな口ぶりで、続ける。


「昔々、あるところに、醜い怪物と勇敢な王子様がいました。醜い怪物は、ずっと独りぼっちでしたが、勇敢で優しい王子様が友達になってくれました。二人はとても仲良しで、ずっと楽しく遊んでいました。しかし、国では怪物を殺せという法律が出来てしまいました。醜い怪物は国に見つかり、国王の命令によって、王子様は仲の良いその怪物を、自らの手で殺さなければならなくなったのです。王子様と怪物は涙を流しました。そして王子様は剣を振り上げて、怪物の首を切り落としたのです――――――」


淡々と語る残酷なストーリーのあと、琢磨は小さく皮肉げな息を吐いた。


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