「そういえば騒禍ちゃん、君はいつまでここにいるのかな?」
「永遠に」
「えっ、本当? 嬉しいよ!」
「嘘だけど」
「……………」
「そんな顔しないでよ誘くん」


若干悲しそうに眉尻を下げて、なんとなく睨みを利かせる彼に、あたしはそう返した。

今は誘くんのオフィスのソファーで寛がせてもらっているあたしと三月。三月は相変わらず眠そうに欠伸をして、数十秒ごとに目を擦っていた。あたしと三月の前の机にはまだ湯気を吹くコーヒー。……キューテンキューに言った方がいいのかな、三月コーヒー駄目だって。

前に来たときと間取りは全く変わらず、所在なさ気になることは皆無だった。
視界の端ではキューテンキューがせかせかとシュレッダーに紙を流し込んでいく。目を懲らすと、さっきの《山椒魚》って名前の男の顔写真が貼付けられていた。うーん……やっぱ、見たことあるような?


「誘くん」
「うん?」
「高校のときにさ、同じ学年に、さっきの《山椒魚》みたいな奴いなかったっけ?」
「……さあ? どうだろう。僕はそんなに社交的な人間でもなかったじゃない」
「そっか」


曖昧にぼかした回答をしたことも気にせず、あたしは頷いた。
まあ、あたしより社交性に欠けてる人間でもなかったけど、確かに彼はいつも集団でいるようなイメージは無かった気がする。ていうかずっとあたしといた気がする。もしくはへーくん。でもそれなりに人と関わってたしクラスで密かに人気もあったような……あったような……あー、もういっか!


「ところでオーナー。さっき《山椒魚》が破壊した椅子やガラス、パトロン達の慰謝料が馬鹿になりません」
「えっ。そうなの?」
「パトロン達の中には、オーナー直々に制裁を課してくれたあのシーンでチャラにする、と言って下さる方達もいるんですけどね」
「あはははははははっ、スゴかったもんね。久しぶりに誘くんが戦ってるところ見たよあたし!」
「えへへ、君が喜んでくれて嬉しいよ」


紳士的に微笑んだあと、誘くんはキューテンキューに視線を移す。


「じゃあ《山椒魚》の臓器でも売っちゃう?」
「一番高値の心臓をアンタが引きちぎりやがったんで、あんま見込めないとは思いますがねー」


キューテンキューは空を見ながら厭味たらしく言い放つ。誘くんは苦笑していた。

確かに、*+αの殺し合いにおいて、一試合にベットされる金額は百万単位――魚くんは数千万とかだったけど――ワントーナメントで考えてみれば十億は下らない。
それだけのキチガイがここに集まっていると考えるのと同時に、それだけ慰謝料も高いのだと認識した。


×/

「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -