デッドリーストライクからあがったとき、私の身体は大抵キラキラしている。
あの不思議な液体の煌めきが身体に付着するのだ。
血色の悪い肌やあたしの髪に、この星の瞬きが大胆に加味され、そのときのあたしの姿は正しく絶世に不気味だった。
水槽の横にあるマットを踏み締めて、肩のあたりをくんくんと嗅いでみる。若干ラムネっぽい臭いがした。デッドリーストライクは無臭なのだが、浸かり終わったあとは必ずこの臭いがする。甘い匂いではなく、甘い臭い。鼻腔をつんざく、この臭いが。
あたしは足元の籠に置かれていたバスタオルを取る。そのままそれで頭を拭う。キラキラがバスタオルにも付着した。
「お召し物とドライヤーをお持ちしました、お嬢様」
ふと視線を移すと、ラヴィが有るか無きかの笑みを浮かべて、十メートルくらい後ろの方で立っている。
多分おむつまで変えて貰ったであろう相手に、今更羞恥心も何も無いし、むしろおじいちゃんくらいにしか思えないけど、それにしてもデリカシーってものはないのかこの執事めが。
あたしはバスタオルで身体も拭っていく。
「ありがとう」
「ご機嫌はいかがです?」
「身体の調子ならまあまあ良好。固定してくれた左手も今は全然痛くないし、普段となんら変わらないかな」
「ではお気分の方は?」
「アンニュイ」
「それは芳しくないですね」
あたしは彼に近付き、彼が持っていた服をもぎとる。ベージュに薄い花柄の、あたしの手持ちにしては珍しい膝丈のフレアワンピースだった。
被るタイプじゃなくてボタンタイプか。あたし着易さ的にコレ嫌いなんだよなあ。
ボタンはご丁寧に外されていたので、あとは脚を突っ込んで引き上げるだけだった。
「こちらの椅子へ」
どこから用意したんだ。
目から鱗な周到さだよ。
ひじ掛けも背もたれも全部ガラスで出来た悪趣味極まりない椅子。あたしが腰掛けるとラヴィは「後ろ失礼します」と言って、背後に回り、あたしの髪をブローしていく。
「もう、心配はかけさせないで下さい。お嬢様」
手で優しく髪を摘みあげながら、彼はそう言った。
「暫くはこの屋敷にいて下さい。死んでしまいますよ」
「過保護はよしてよ、ラヴィ」
「過保護ではありません。幼少の頃より面倒を見させてもらったんですから……貴女が可愛くて仕方ないんですよ」
ここからじゃ後ろにいる彼は見えないけど、多分苦笑しているに違いない。少し息を含んだ声が聞こえた。
「病身だというのにあちらこちらへ行って。旦那様方にお嬢様の身の回りの世話を任されている俺の身にもなって下さい」
「あははははははっ、あんまり気張らなくってもいいのに! もしあたしに何かあったら、ラヴィは悪くないって、二人に言ってあげるからさ」
「何かあられては、困ります」
低い声で彼は言った。
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