《天才》だとか《落ちこぼれ》だとか、一体誰が決めたんだろう。とある画家が二人いたとする、一人は類い稀なる才能を持った画伯として名を世間に知らしめいていて、一人は名前も覚えて貰えずむしろ存在すら知ってもらえない程度でそれでも絵を描き続けていたとしよう。まず、誰の目からしても、前者を《天才》、後者を《落ちこぼれ》と呼ぶに違いない。
しかし。
もしその《落ちこぼれ》は落ちこぼれなりに日々画力を研磨し続けているとしたら。もしその《落ちこぼれ》は誰からも慕われるような人格者だとしたら。
少なくとも、誰も彼に《落ちこぼれ》などというマイナスなイメージは抱かない筈だ。彼の愚直なまでひたむきさを酷く前向きなものと考えるだろう。
つまりは受け取り方の違いだ。
《落ちこぼれ》ではなく。《発展途上》と、《新参者》と、《これから登ってくる相手》と。そう思うか思わないかの違いに過ぎないってわけだ。

あー。
落ちこぼれてる俺が言うとなんか言い訳がましいかも。

だけど、たとえ《落ちこぼれ》と呼ばれようが、隠れた才能や見付けにくい特性に気付ければ、その人間は《落ちこぼれ》じゃなくなる筈なんだ。

ほらな。
いよいよ怪しくなってきたろ?

一体誰が決めたんだよ。
《落ちこぼれ》と、《天才》を。

中途半端な奴が、自分より程度の高い者を《天才》、低い者を《落ちこぼれ》と呼んだに違いないがな。案外相対的なもんだ。


――――ねぇ、そこの君。


でも。
本当の、本物の、本格の《天才》は、違う。
誰よりも天賦の才能に恵まれ。
誰よりも確実に己を研鑽して。
相対的じゃない。
絶対的な、天才。

俺は、会ったことがある。

その天才に。

あそこまで愚直な《天才》は初めてだった。

あそこまで。

あそこまで、“紅”い、天才は。



*****



「「うぁぁあぁぁああッ! お゙に゙い゙ざぁ゙あ゙ん゙ッ゙!」」


茄子と別れ、小芥苔子と水倒火転に護衛され、なんとか手に入れたタイヤを携えながら俺尾レオの家に帰ってきた、まさにその瞬間。
奇抜なちっこい塊が、俺の腹周りをモノスゴいスピードで襲いかかかり、そしてそのまま、俺を転倒させた。
ゴチンッ、と結構痛そうな音が鳴った。痛そうじゃねえ。痛いんだよ。
俺は頭を押さえながら上半身を起こす。
あの二つの塊は、間違いなくフルボトル姉妹だった。あんな奇抜で奇怪な極彩色の物体があの二人以外にいてたまるか。俺は文句の一つでも、いや、ゲンコツの一つでもぶちかましてやろうと思ったがそれは自発的に抑制されることとなる。


「うぁあ、びぇ、ううううっ!」
「ふゎ、ぐすっ、うぇぇえん!」


泣いていたのだ。
フルボトル姉妹が。


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