あたしは、世界一不幸だったことがある。
これは完全に完璧に確固たる自信を持って言い切れる事実だ。あたしは、世界一不幸だった過去を持つ人間である。

身不幸であり
親不孝だった。

一つ弁解をさせてもらうなら、あたしはただの一度も非行に走ったことはない。ドラッグにも売春にも関わりなく育ち、殺人を犯して親を泣かせたことだってない。これはあたしという人間でも、絶対を保障できる事実だ。

それでもあたしは。
身不幸であり。
親不孝だった。

身不幸。

あたしは不幸だった。
全世界七十億人のうち、ぶっちぎりで不幸だった。
かつてのあたしを知る人間なら、誰だってそう言うだろう。今のあたしにだって哀れみの目を向ける人間さえいるくらいだ。世の中の生温い優しさに呆れてしまうが、あたしは知っている。
世の中は、世界は優しくなんかない。いつだって残酷で、そして、意地悪なのだ。
でも。
あたしはあたしを可哀相だとは思わない。不憫だとも悲哀だとも思わない。こんな不幸はよくあることで、こんな不幸を憐れむ無意味を、理解していたからかもしれない。


なーんてね。


さて。
いつまでこんなしみったれたワケワカンナイ話してんだとご立腹な皆さんに朗報。
時は来た。
今こそ、物語の始まり。
あたしの感想が逐一描かれるだろうけれど、それは楽しいスパイスとでも思って大目に見てほしいところだね。
アハハハハハハッ。

ではでは。

喧嘩誘発屋。
戦争谷騒禍の物語の、はじまりはじまりー。



*****



あたしの家は、多分おっきい。
普段は家……というか実家を出てホテルや廃墟を梯子して暮らしていることが多いので、ここがあたしの家という気分はあまりしないのが現状なんだけどね。
白い壁面に、金の手すりやバルコニー。茶色のドア。敷地面積は、ドラッグストアでも開業出来る程度。ちなみに一戸建て、ちょー広々してる。まあ実のところ庭のがでかい。一面の向日葵畑なのだ。自分の背丈よりも明らかに高いそれたちが、百も千も連なり広がっている。向日葵屋敷と、あたしは小さい頃呼んでいた。

その向日葵屋敷に、あたしは約半年ぶりに帰ってきた。
ただいまマイホーム。
久しぶりだね。
おかえりと言ってくれないのが非常に残念だよ。

あたしは、茶色い豪勢で重いドアを、やっとの重いで開けた。


「お帰りなさいませ、お嬢様」


向日葵屋敷ではない、人間の男物の肉声。シルクのように優しいテノールが、耳に反響した。


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