エピローグ 1/1


 あのね、私、なんかこの前、異世界の夢に出てきたひとに会ったんだ。
 いやジョークとかじゃなくて。
 前にも話したからいきなりでもないよね。ちょっとなにから話していいかわからなくて、私のほうが落ちつきないのかもしれないな。まあいいや、とりあえず聞いてよ。
 あー……待って。どこから話そうかな。
 いっぱいいっぱい、話したいことが、聞いてほしいことがあったんだ。だけどうまくまとまんないや。困ったなあ。
 会うのが一番手っ取り早かっただろうな。あの場にいなかったもんね。
 すごく綺麗で強いひと。弱いと勝手に思ってたけど、そんなことなかったんだ。弱いのは私のほうだった。
 本当はね、ずっと、貴女がいなくなってから途方に暮れていた。
 だけどそうも言ってられなくて、みんな私を励まそうとするし、でも新しいパートナーの子とは上手くいかないし、夢を見たあとの落差に落ちこむし、大変だったんだ。私、全然すごくないでしょう? 実はとてもかっこわるかったんだよ。
 あはは、でも悪いことばかりでもないよ。
 私、やっとわかったんだ。あの子になにをしてあげればよかったのか。あの子たちが抱えていた気持ちも、言葉も、今まで考えたこともなかったことがいっぺんにわかって、この数か月間それについてずっと考えてた。
 ピンキーのない世界が素敵だって、前に言ったよね。
 私はあの世界で悲しい顔をいっぱい見てきたから、うんとは言えなかった。
 私もあの頃は幸せの押しつけをしてたんだ。
 なんであんな夢を見るのかって愚痴りながら、この世界の制度を愛してたんだろうね。
 でもそうじゃなかったの。違うって思ったの。悲しいことを悲しいと思えないのは悲しい。思い出せないのはすごく不幸だ。許されないとつらくてしょうがない。泣いていることを責められるのはおかしい。あの子たちの気持ちになって、思ったの。
 私はそれを知るために、あの夢を見ていたのかもしれないね。
 ……変かな? 私のことを変人扱いばかりしてたもんなあ。心配しないでって。キチガイじゃないよ……一人でぶつぶつ言ってたらそりゃあそう見えるかもしれないけど。
 うん、まあ、だから……私の愛と正義は、そうなのかなって。
 まずは泣いているひとを、慰めることから始めてみようと思う。
 やっぱりちょっとおかしい? イカレてる? なに言ってるのかわからない? 心配しないで。大丈夫。現実的な話だよ。
 ……ああ、もう時間だ。

 じゃあ、いってくる。



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