円堂の体温は高い。 円堂の腕の中で見た夢はいつだって暖かく幸せな夢だった。共に暮らし、同じ時を過ごし、日々を積み重ね、愛を確かめ合う。そんな当たり前の恋人達のような、温もり溢れる日々を夢に見るのだ。現実は赤子も眠る冷たい真夜中だというのに。 夢の中で円堂は言った。 「ずっと二人で幸せに生きていこうな」 我ながら陳腐で願望丸出しの愛の台詞に、起きた俺は自嘲した。ふと横を見ると茶色の瞳がこちらを見ていた。 「起きてたのか鬼道」 「あぁ」 「怖い夢でも見たのか」 「…何故?」 「泣きそうな顔してる」 円堂は優しく抱きしめてくれた。夜の気温で冷えた腕ごと包み込まれるように俺は円堂の腕の中に収まる。 「お前と幸せになる夢を見た」 「そっか」 「幸せだった」 「そっか」 「幸せな夢だった」 「そっか」 「…」 円堂は言った。 「ずっと二人で幸せに生きていければいいのにな」 ほら、ズレた。 あれは現実にあまりにも近くて遠いまるで鏡のような夢。笑えるくらいへたくそな、俺の夢。 title:白々 110623 |