出会わなければよかったなんて思いたくない。だがどう二人が足掻こうとも結末は離別というバッドエンドしか待っていない恋人達に、寄り添う時間というものはどう流れても足りなすぎる。いつかはどちらも伴侶となる女性と人生を歩むだろう。どちらも後継ぎが必要な身分だ。共に理解も認可も容易であった。容易であったからこそ互いの諦めの早さに涙も出ない。出たのは渇いた笑い声だった。
「この状況が、環境が無ければ俺達は出会えなかった。だがそれらのせいで、俺達は共に生きることが出来ない。皮肉なものだな」
鬼道は悲しげに笑った。俺もそうとしか思えなかった。鬼道の目を見る。ゴーグルの奥は見えない。目が見えないだけでこんなにも孤独感に苛まれるなんて思ってもみなかった。先程まで冷静だった俺の脳みそは男同士の恋人ごっこで随分とセンチメンタルな腐敗をしたのだろう。読んで字の如く感情が押し寄せてきた。泣いたら別れられないような気がしたら余計目の下辺りかむずむずした。歯を食いしばりなんとか堪えた。鬼道もゴーグルの奥で俺と同じように涙を堪えていると嬉しいだなんてそんな女々しいこと男の俺はやはりだいぶ浸蝕されたようだ。でも誰にだろうな。笑ってしまう。あぁ、鬼道と笑いたい。ずっと一緒にいたい。幸せに、なりたい。









生まれ変わったらなんて考え出したら多分末期だな
110403