「…………。」

「………一さん」

「…………。」

「…私が何を言いたいかわかってますか?」



私はじとりと目の前で風邪で寝込んでいる一さんを睨んだ

彼が土方さんを助けたい気持ちはわかっているつもりだけど、ここ数日寝ないで仕事をしていたのだ…風邪をひかないわけがない。


「あれでは風邪をひくのは当たり前なんですからね!」

「……………すまない」

ついつい声に怒気がこもってしまう。

こんなことを言うためにここに来たわけじゃないのに…


素直になれない自分が嫌になる。


「………ごほっ…名前っ」

つらそうな一さんの顔に少し胸が痛む
私はなるべく優しく声をかえそうと心がけた。

「…何ですか?」

「……まだ……怒っているか?」

「え?」

「その…だな…」

一さんは言葉を濁した。その頬は心なしか赤みが増したような気がする。

「本当なら、あんたをここに長居させるわけにはいかいのだが」

「…一さん…?」


話の途中…
微かに一さんが動いたのかと思っていたら、その手は私の服を掴んでいた。

「……。」

思いがけないその行動に胸が脈打つ。

あまり人に弱さを見せない彼の
小さなサインが…

『そばにいてほしい』

そう言っているような気がした。





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