この涙はどうしたら止まるんだろう。私は泣いていた。怖い夢を見たわけでも悲しいことがあったわけでもないのに、ただただ涙が出るのだ。朝起きた時からか、もしかしたらそれよりもずっと前からか。とにかく涙は止まらない。

「どうしたの!?名前」
「綱吉…くん」
「どうしたの、どこか、痛い?」

私は力無く首をふって俯く。白いシーツにしとしとシミが広がる。瞬きするたびに零れる水滴。
心配そうな綱吉君を見上げる。
綱吉君を困らせちゃいけない。困らせちゃだめだ。

名前

耳の奥で誰かが私を呼ぶ。優しく、優しく、私を脅かさないように壊さないように大切に、大切にしてくれているのがそれだけで分かってしまうような


「綱吉君、わたし…どうしちゃったのかな」

胸が苦しいよ。鎖できつく締めつけられているみたいに痛くて、痛くてたまらない。
まるで大切な何かが私の中からごっそり削ぎ落とされてしまったかのようで、私は、あてもなくその何かを求め続けた。それが物なのか人なのかそれとも別の何かなのか全く見当もつかないまま、ただ。


「名前」
「ねえ、つなよしくん」


「わたし、何をなくしたんだっけ」

私がそう聞くと綱吉君は私と同じような…泣きそうな顔をして、とてもとても辛そうに首を振った。私は分からなかった。
綱吉君はたまらずと言ったように私を抱きしめてくれたけど私が欲しいのはそれではない様な気がした。一瞬記憶の片隅でほころんだ赤が私を捉えた。その時香ったウィスキーが酷く懐かしくてまた涙が出た。

瑠璃色の思い出
(君を守るため、あいつは君の中から自分を消したんだ)

1214 企画「Intuition」様