さよなら、なんて言わせませんよ。


名前の細い首にあてがった自分の手にぎりぎりと力を込める。名前の綺麗な顔が苦しそうに歪むのがまた僕にはきれいに思えるのだ。「あなたは僕の支配下にあれば良いんですから」僕の見てない所で泣くことも笑うことも悲しむことも喜ぶことも生きることも、
死ぬ事だって赦しません。
僕のものでないのなら死ねばいい。いいえ、僕が、殺して差し上げます。


「む、くろ様…あたし、も」
「何です。言ってごらんなさい」

「げ、んかいで…す。でも、あ     」


最後ににっこりと(苦しそうな顔はもうなかった)ほほ笑んだ名前はくたりと動かなくなった。どうして。僕が、殺したから。そんな、今彼女は何て言った?限界、違う…その後


あいしていました



そういったのですか。




「あ、ああ、」

指の先から全身に伝わってくる震えはやがて僕を侵食して闇の底に置き去りにした。どうしよう、怖い。そんな感情とっくになくなったものと思ってたのに。ぼくは、「僕は、遅すぎた…?」気付くのには遅すぎた。この狂った愛を彼女にぶつける前に考える事があったろうに。だけどごめんとは言いません。切り裂いた夢を負わなければ。


彼女が居なくなった今、僕の前には何も怖いものなど無いのだから。








僕を弱くさせるあなたは僕の
最大の敵でした
これで僕はむてきだ
悲しむことなんて無い筈なのに



(誰かこの穢れた涙を抑える術を僕に教えて)