ミドリちゃんと別れた私は教室へ戻り、チャイムと同時に着席した。クラスの過半数が肩で息をして私を睨みつけている事から、昼休みはろくに休めなかったと見える。ざまーみそずけ、である。

「あいつ、亜里沙殺しかけたらしいぜ」
「イカれてやがる」

私がいつ殺しかけたっての。心の中で吐き捨てて、教科書を取るべく机に手を差し込んだ。――――痛ってぇええ。誰だ画鋲仕込んだ奴!王道すぎてすっかり盲点だった。勢い余ってかなり突き刺さった。でも痛い顔なんてしてやんない。

「オイ」
「…何です向日君」
「お前いい加減にしろよ!!」
「(ハァ)もう授業が始まりますよ。」
「うわ」
「…ちょっと」
「わ、悪い。あ、……クソクソ自業自得だ!次何かしたら今度こそただじゃおかねーからな」

向日は私を罵るつもりで来たようだが、机の中から出た血まみれの私の手を見ると引きつった顔をした。ついでに咄嗟に謝っちゃったらしい。
反応を見る限り彼の犯行ではなさそうだ。
今日は午前中にタオル使っちゃったから、この濡れたのをもう一度使うしかない。溜息を吐きつつ鞄を漁っていれば、顔面に白いのがぶつかってきた。


「…私、"終わり"なんじゃなかったんですか?宍戸君」
「脇で血出されても目障りなんだよ」
「…そうですか。どうも、」
「それ返さなくていいから。お前の血ついたヤツなんて使う気起きねーし」
「…」

何コイツ。極度のツンデレ?めんどくせー。
ここまで嫌な事を言われたら返す気も有難がる気も根こそぎ奪われる。止まる気配を見せない指先を頭上に持っていきながら、私はぶすっと赤く染まるタオルを見つめていた。

じくじく

「苗字!お前何しとるんだ」
「出血を止めようと…」
「タオル真っ赤じゃないか!さっさと保健室行け!」
「…」

転校三日目なのに、まだろくに授業受けてません。

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