なまえは心の底から大笑いしていた。間違えた、心の底でだ。外見はあくまで無表情。自分の席について教科書を開いている。私に殴りかかってくる輩は今のところ見受けられない。 「(ぷふー!…中厨諸君、ビビってらっしゃる!)」 伊達にヴァリアーで鍛えてませんから。幾多の死線をくぐってきた私の威圧もとい殺気をなめるんじゃないわ! まあこんなのザンザスのそれに比べたら屁みたいなもんだけどね。君達なんて怒り狂ったザンザス前にしたら失禁どころの話じゃ済まないんだから! 「苗字」 「…あ、はい」 「何ぼさっとしてる。起立しろ」 ふと我に返ると周りは皆起立していた。一体いつ号令をかけたんだろう。まあいいや。 1時間目は数学だった。 教科担の教師が昨日より刺々しいのは間違いなく「噂」の影響だろう。先生っていうのは普通少数派につくものだろうに…生徒のいじめを見守る話なんて聞いた事ないや。ジャッポーネったら最先端〜。 小バカにしながらそう思っていたら、演習の問題を全部当てられた。腹が立ったので全部解答のままに答えてやった。何故できたのかって?簡単なトリックだ。 壁際に立って嫌な笑みでこちらを見つめる教師の、後ろの壁にくっついていた鏡に教師用の参考書の答えが映って見えたのだ。バカだと思った。 戦闘は常に近距離型の私だったけど、視力の衰えは面白いくらいない。 鏡に映った文字を一瞥して暗記し、諳んじてみせたわけである。はあ、私って意外に策士だ。 「…全問、正解、だ」 すごく悔しそうな顔してるな。そんなに露骨に嫌っていいのだろうか。PTA的な問題の話である。 「調子に乗りやがって」 「あんなん誰でもできんだよ」 うそこけ。そう思ったが、ぼそりと聞こえた言葉達はシカトさせていただいた。 波乱の音が聞こえた 「苗字なまえ。…来い」 (…) ×
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