「確保!」 授業終了20秒後、教室後方の引き戸が勢いよく空き、跡部が現れシャウト。呆気にとられる私の両サイドをジローと忍足が固めた。 「な、なんですか」 「跡部財閥御曹司様の命令やからな。」 「拒否権はねぇぜ」 「なまえと昼ごはん食べれるなんて、俺うれC〜!」 「おい待てジロー。お前いつの間に名前呼びに」 「ジローちゃん…どこつれてくの?」 「何でジローにはタメ口やねん!」 「さっき約束したんだC〜。ねーなまえ」 「…うん。」 かわいくお願いされて断れなかった。ち、違うよザンザス!浮気とかそんなんじゃないから!嫌いになっちゃやだよ! 心の中での言い訳を続けていれば、いつのまにか屋上に到着していた。 「…こんなところで何するんですか」 「アーン?だから、飯食うんだよ」 「私お弁当箱教室」 「なまえの弁当箱持ってきてやったぜ。つーかパシんなクソクソ跡部」 「…」 こうして私と氷帝テニス部、鳥居亜里沙との奇妙な昼食会は始まったのであった。 「え!じゃあお前ら一緒にいたのかよ!?」 「ええ、まあ」 「ほとんど寝てたけどね〜!なまえの膝枕気持ちいーC」 「おまッ!!…ジロー。テメェは後でちょっと呼び出しだ」 「A〜!跡部意味わかんないC〜」 私は黙々とお弁当を食べていた。 同じように黙々とパンを頬張る亜里沙からの視線が凄まじい。何でみんなに気付かれないのか不思議でならない。――うーん。ちょっと更に怒らせてみようか。 「(パクパクパク)ごく、っけほ」 「お、おいどないしたん!?」 「けほっ!あ、とべ、水」 「おら!早く飲め」 差し出された跡部のミネラルウォーターを一気に煽る。一瞬視界の端に入れた亜里沙の表情の怖いこと。もう一回言うけど、何でみんな気付かな……ああ、あたしが咽てるからか。 「まったく…何しとんねん自分」 「けほ…、ん。も…大丈夫です」 反対隣りの忍足が呆れたように背中を叩く。「がっつきすぎだ」とその更に隣で宍戸が呟いた。もしかして今ので食い意地が張った女とか思われたかもしれない。別にいいけど。 「…すいません、これ」 「アーン?」 「新しいの買ってきます」 立ち上がりかけた私の腕を跡部は掴んで引き留めた。よし、かかった。 「別にかまわねェよ」 「でも…」 「俺様はそんな小せーこと気にする男じゃねェしなァ?樺地」 「ウス」 「でも跡部さん」 ここで会話に入ってきたのはキノコヘアーの静かな子だ。 「この前缶ジュースの飲み口傷ついてたって言って業者に問い合わせてませんでしたっけ」 まじかよ。 「黙れ日吉」 「ああ、紹介してへんかったな。跡部の隣に座っとるのが樺地で」 「ウス」 「う…うす」 「跡部と言い合っとるのが日吉。家が古武術の道場やっとるんやで」 「…宜しくお願いします」 「あ、はい、こちらこそ」 「そんで亜里沙の隣に座っとるのが鳳や。昨日会ったやろ?」 「ええ…まあ少し」 「鳳長太郎です。昨日は挨拶できなくてすいませんでした。宜しくお願いしますね」 顔合わせは済ましたので 「今紹介したんが俺らの後輩やで。仲よくしたってや」 (こちらこそ、どうぞよろしく) ×
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