「ししししっ、ごくろー」電話を切ったベルが上機嫌にこちらを向く。

「あの女のリアルカルテ入手成功だと」
「でかした!」
「あの女…亜里沙か?」
「ししし!そ。ヒビ一つねェって」
「やっぱね〜。あの落ち方じゃ青あざも怪しいっつうの…。とりあえずスクアーロに敵城視察ついでにカルテ回収してきてもらって…カメラもいちお」

その時、言わずもがなな人物によってけたたましくドアが蹴り開けられた。
ジローがびくっと飛び上がり、私は風のような速さで彼のもとへ走った。

「ザンザスー!!」
「ドカス!!」
「ふげっ」

ザンザスの容赦ない鉄拳制裁によって床に沈んだ私。おかしいなぁ。ここはハグで愛を確かめ合う算段だったんだけど。

「何をカスガキ共に壊されてやがんだドカス。いざとなったら使えっつったの忘れたかドカス」
「ぴーっ、だってぇ」
「だってもクソもねェ。次出し惜しみしやがったら回収する」
「なっ…それはいやだ!だってこれはザンザスからの愛の………あああああああ!!」
「るせェ!」
「げふう」


再び床に沈んだ私に、ジローは小さく「だいじょーぶ?」と尋ねた。
そうだよね、バイオレンスだったよね。
だがしかしこれは何たることか。

「…3発も減ってる」
ちょっと軽いなと思ってたんだよ!
私の悲痛な声に、ベル達は一瞬きょとんとした。

「え?お前覚えてねーの?」
「全然」
「俺達に向けて3発撃ったんだよ」
「さすがにビビったC〜」
「ウス」
「え!!?そ、そんな、ちょ……大丈夫??」
「王子に銃向けるとかオマエ生意気だよなー、ほんと。あ、ボスにもな」

私は驚愕の表情でザンザスを見上げた。無表情で見下ろすザンザス。私の目に薄く涙の膜が張る。
だいじにしようとしていた拳銃…
まさかボスに向けてたなんて


「ボスごめんなさ「るせェ、ドカス」
「え、ちょ、ザ、ギャー!」

かがんだザンザスに服の裾を思い切りめくられた。垣間見える大きな痣。スカートもめくられた。視界の端には口笛を吹くベルと、赤面する跡部が。羞恥で死ねる。
体中の痣と切り傷の位置を確認された私は、ロクな抵抗もできずにされるがまま。
恥ずかしい反面とても焦っていた。
ザンザスキレるんじゃないかな…。この痣と傷の量。さっきまでヘラヘラしてたベルも殺気滲み始めたし、ジロー達の顔も険しいし。


「なまえ」

「、なに、ボ」
びくびくしながら顔を上げると、ザンザスの手が首の後ろに回り、優しく引き寄せられた。

「痛ェだろうが」

「!」



「…よくやった、なまえ」



「っ」私はザンザスの体を強く抱き返してこっそり泣いた。
痛みを認めてもらえただけで、こんなに気持ちが軽い。まだ大丈夫だって思える。


ありがとう、ザンザス
いつか私も

いつか  ザンザスの痛みを

深紅のベール
(ねえレヴィ、ザンザスに褒められるって素敵だね)(急になんの電話だ)

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