呆然と立ちすくむなまえを突き飛ばし、俺は部室を出た。
「ルイさん!!」
後から走ってきた一美が俺を呼び止める。
「考え直してくださいよ、なまえさんがルイさんを裏切るわけねえ!」
「実際裏切ったろうが」
「それは、」
「もうどうでもいいんだよ!」
「ルイさんはなまえさんが好きなんじゃなかったんスか!」
必死な一美を見下ろす。
「俺には、そう見えました。」
「…」
俺がなまえに惚れてたように見えたって?そりゃそうだろ、実際惚れてたんだから。
今までにないくらい大事にしてきたつもりだし、俺がアイツを思うように、アイツも俺を思ってると確信していた。だけど実際は、違った。
「無理やり抱いて、俺だけ見やがれって言えばいいじゃないスか!!」
「…」
「そうすりゃ何か分かったかもしんねぇ!そうすりゃ、」
「おい、カズ
それ以上言いやがったら殺すぞ」
無理やり抱く?それができたらこっちは苦労しねぇんだよ。
あいつが泣いて叫んでも俺のものにならねぇなら、一緒にいる気は欠片もねェ。だってそうだろ。
俺は裏切った女を愛せる程寛大な心の持ち主じゃねェから。
「もうあいつの話はすんな。分かったな」
立ち尽くす一美を残して俺は歩き出す。
――ルイ!
記憶の中でこちらに微笑みかけるなまえを無理やり掻き消した。