賊徒学園二階通路。じんじんと痛む体を無理やり動かして私は廊下を駆け抜けた。後ろから追ってくる複数の足音が気がかりで仕方ない。
咄嗟に角の空き室に飛び込んで扉を閉めた。
息をひそめて足音が通り過ぎるのをじっと待つ。すると直ぐ傍で話し声が聞こえた。


「くそ、逃げられたか」
「まだ近くにいるはずだ!探し出して葉柱さんとこ連れてくぞ」
「アイツ絶対許さねェ!!」

なーにが許さないだよ、バカ…!過ぎ去っていく足音に悪態をついて肩から力を抜いた。
抱えていた黒いケースに目を落として、優しく撫でる。


「…ああ、もう最悪」

あたし殴るのは別に全然構わないけど楽器壊そうとするなんて信じらんない。悪いのはあいつだ、葉柱ルイ。嘘。ルイはそんなに悪くない。ほんとに悪いのは――理奈。あいつだけ

「ど、して…こうなっちゃったかな」

戻りたいよ。
皆で騒いでたあのころに、戻りたい
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