「……」

学校からの帰り道、等間隔落ちているトランプを発見した。
「!」
私の脳裏に雷のようなひらめかが落ちる。これは――ヘンゼルとグレーテル版SOS!きっとこの先には私に助けを求める誰かがいるはず!!走れ私!憧れの感謝状ゲットはすぐそこよ!!




「やあ」
「……あ、どうも」

カードを拾いながら自己トップスピードで走った私と、切り株に座ってトランプをシャッフルしていたヒソカさんは、こうして出会ったのであった。



***

なんやかんやで町の喫茶店でお茶をすることになった。

「最近イイ相手に巡り会えなくってねぇ」
頬杖をついて悩ましげに溜息をついたヒソカさん。
「(運命の人捜しか!)それでトランプを…?」
「そうさ」
「ビンに入れたラブレーターを海に流すかんじのイメージ?」
「分かってるじゃないか。キミ、イイね」

ロマンチストなヒソカさんは私にメロンソーダを奢ってくれた。

「すいませんね、私みたいなのがひっかかっちゃって」
「いいんだよ。キミも中々面白い」
「照れますわ、えへ」
「どうだい?ボクとちょっと遊んでいかないかい?」

ピルルルル、机の上に置かれたヒソカさんの携帯が小刻みに振動した。

「ちょっと失礼」
「どーぞ」

紳士だなぁ。ボンヤリ考えながらストローをくわえる。

「おや、君から電話なんて珍しいね。フェイタン」
「!」

危うく吹き出しそうになった。
フェイタンってあのフェイタンかな!?というか私その他のフェイタン知らないし、それにこんな珍しい名前そうないし…。
きっとそうだ。
そんな気がする!

「んー、クロロがねぇ。そう。でもボク今忙しいんだよ」
「ヒソカさん、変わって!」

うきうきと両手を伸ばすと、僅かに目を見開いたヒソカさんは不思議そうに私に携帯を手渡した。耳元に宛がうと、知っているものより数段不機嫌そうな声。


『そなのいいから早く来るね、団長イライラし始めたら人死ぬよ』
やっぱりだ。

「ダメアルヨー!まだメロンソーダ半分も飲んでないから元取れないアルヨー」
『……』

沈黙

『………なまえか?』 
の末に呼ばれたのが名前で、逆に思考が停止する。え。