交通事故で呆気なく死んだ友人の弔いは、家族とクラスメイト達と彼女の友達の涙に溢れていた。

「仲良かたのか」
「うーん…そうでもない」
「ますます分からん奴ね。なら泣く必要ないよ」

フェイタンに見下ろされたなまえはずっと鼻をすすった。

「分かんないの」

二、三度挨拶を交わした相手というだけだけど、それでも無性に悲しくなる。
あんまりにも呆気なくて、虚しくなる。

「その子が死んじゃったのは一昨日だけど昨日と今日は何も変わらずに来たし、明日もそうやって来るんだと思ったら……なんだかな、って」
「くだらないね」

ぴしゃりと言い放ったフェイタンはなまえに背中を向けた。

「人間、いつか死ぬよ。短いか長いかそれだけね」


――生き残れるのは強者だけだ。
隣り合わせにある死の存在を忘れ、車なんかに挽かれて死ぬなんて、どう考えてもそいつが悪い。旅団の団員がそんな死因を耳にしたら、爆笑された末に三日は酒の肴にされるだろう。
フェイタンはそう確信して口角を上げた。





「フェイは、死ぬのが……」

こわくないの?なまえは言いかけて口を閉ざす。フェイタンは答えないような気がした。
肝心の答えに予想はつかないながらも、フェイタンの中には揺るぎない正解があって、「愚問すぎて」教えて貰えないのだ。
まだたった一回会ったばかりの彼について、なぜか私はそう確信できた。



ブランコから腰を上げ、傍に止めてあった自転車を押してフェイタンの背中を追いかけた。隣に並ぶと、何だと言いたげに横目で見られる。

「途中まで一緒に行ってもいい?」
フェイタンは目を細め、前を向く。

「またお得意の"道連れ"か」
「うん」
「ワタシ生意気な奴嫌いね」
「フェイタンさん、途中まで一緒に帰ってよろしいでしょうか」
「気色悪いよ」
「…」


唇を尖らせるなまえを見て若干面白く感じた。隣に弱く脆い一般人が歩いていて、気分が悪くならなかったのは初めてだ。
やっぱりまだ殺す気は起きなかった。