恋を自覚した瞬間、これまで普通に出来ていたことが出来なくなることって、きっと乙女の諸君にはよくあることなんだと思う。

私に関して言えば、フェイと一緒のベットに寝ること。これ一択。ていうか、え?むしろ何で今までこんな事平然とできてたの?お父さんとだってここしばらく一緒に寝てないけど。

「自分がさっぱり理解できない」
「何ぶつくさ言てるね。ささと来い」
「フェイタン、私今日からマチの部屋で寝」
「あ?」
「うそですなんでもないです。ふげっ」

シャツを引っ張られてベッドの中に倒れ込む。
ぼふっと上から毛布がかぶせられて、薄明かりの中、すぐそばにフェイタンのつり目が合った。

「こ、こころのじゅんびが」
「そなの待てるうちに朝来るね。お前何緊張してるか」
「だ、だって」
「いつも通り、ただ寝るだけよ」


ちゅ、とフェイタンが額に唇を寄せる。
全然いつも通りじゃない。
こんな事いつものフェイタンはしないもの。
胸を抑えてぎゅっと目をつむると、じんわり目元が濡れてくるのが分かった。
慌ててフェイタンの胸もとに顔をくっつけてごまかす。

「………何泣いてるね」
「もう!何で分かんの!」
「分かるに決まてる」

またどこか痛いのか。そう尋ねるフェイタンがおかしくて、私は鼻声で笑ってしまった。

「痛くない。嬉しくて幸せで、じーんときちゃって」
「ハ?嬉しい時涙出るとかただのバグよ。病院行け」
「いやこれバグじゃないから。フェイもしや人間初めて?あ、嘘うそ痛い痛い痛い鼻もげる!」
「……バグじゃないなら早く止めるね。お前が泣いてると落ち着かないよ」

頷いて、フェイタンの手を握る。
それを軽く握り返してくれるのも、
こっそりお休みを言ってくれるのも、
何もかもが少しずつ降り積もる雪のように、心を優しく暖める。

(好きだよ、フェイタン。)


「………すき」