「フィンクス!!ふぃ、や、.....やめて!」
「ダメだ」

どうしてこうなった!
私はフィンクスの頭を押し返しながら必死の声を上げる。
しかしフィンクスはと言えば、突然ナース服の襟首を引きちぎって(これはクロロさんが泣く)、私の首元に口を寄せてきた。

「や、だ、」

熱い息が肌をざわりと泡立たせる。
煙草の匂いがする。
フィンクスの重みが現実感を一層際立たせる。
唇が肌に触れた。きつく、痕を刻むように吸い付かれる。
熱い、痛い、怖い.....怖い。

「フェ、イタン.....!!!」


ぴたりとフィンクスの動きが止まった。
私の首元から顔を離したフィンクスは、いつも通り、仏頂面に片眉を上げた普通のフィンクスだった。


「もういい加減分かっただろ。お前にとってのフェイは、ただの友達なんかじゃねぇ」
「フィ、ン.....」
「こういう時にまっ先に助けを求める相手で、お前が何よりも頼りたい相手で、ーー俺がしたようなことをやっても、きっとお前が許せちまう相手がアイツなんだろ」

ひっく、と喉を鳴らしながら、微かに頷く。

「じゃあとっとと自覚しろ。見ててもどかしいんだよテメェ等は」

あっさり私の上から退いたフィンクスは自分のジャージをこちらに放って、何を言うでもなくさっさと部屋を出ていってしまった。
私はジャージで胸元を隠しながら、半身を起こして暫く座っていた。

フィンクスは、私に理解させようとしてこんなことをしたんだ。.....じゃあ、何を?
真っ先に助けを求めてしまって、
頼ってしまって、
フィンがしたようなことをしても許せる相手。

友達よりも距離が近く、隣にいてただ心が綻ぶ。
その人の笑顔を思えば嬉しくなって
伝えたいことがいくらでも、後から後から溢れ出のだ。


「フェイタンと、いると」

その瞬間、ぽろりと胸から花が零れた。
真っ青になって立ち上がり、部屋に向かって全速力で走る。それでも道中落としてしまった花びらは戻って全部拾って窓から捨てた。

布団に潜って、
何も考えないようにしていたのに、鼻腔はすかさずフェイタンの香りを嗅ぎとって反応する。ポロポロこぼれているのが分かる。
その度、思いが溢れる。

「す.....、き、?」