生まれて初めてのパーティはこう言ってはなんだがとても楽しかった。豪華なシャンデリアにお城の広間のような会場。見目麗しい人々。美味しいお料理。目移りしすぎて、途中からこれが仕事だということをさっぱり忘れてしまったほどだ。

「結局豚みたいに飲み食いしてただけだたね」
「ぶ、!?だ、だっておいしいから」
「お前のこと言てないね豚」
「え?あ、ああ!主催者のおじさんね!確かに.....あれ今豚って言った?」

最初のぎこちなさは10分もすればいつも通りに戻ったので、多分緊張から来た動悸とか息切れとかそんな感じだったに違いない。帰ったら救心飲まなきゃ。

「もうすぐ団長から任務終了の連絡来るはずよ」
「りょうかい!」

しかしそれからしばらく待っても連絡はなく、怪訝に思ったフェイタンと共に私達はテラスに出ることにした。
腕を組むのにも慣れてきた私は、こっそりフェイタンの耳に囁く。


「フェイ、気のせいかもしれないんだけど.....」
「分かてる」

どうにも先程からチラチラとこちらを伺うような視線を感じるのだ。フェイタンも分かっているなら特に私が気にすることもないのだろうけど.....。

テラスに出ると、視線の主のシルエットがガラスに映った。遠目でよく分からないが、隠れる気はなさそうだ。
(もしかしてバレたんじゃ...)
ひやひやして黙り込む私の腰を、突然フェイタンが引き寄せた。ハッとするほど近い距離に顔がある。

「フェイッ、」
「静かに。見張られてるよ」

硬直する私の顎を、フェイタンの細い指がするりと撫で上げた。

「な、な、なな」
「オコチャマ。もと余裕そうな顔しろ」
「は、ははい」

フェイタンが何をしようとしているのかは流石に察せる。恋人の振りをして監視の目を欺こうとしているのだ。
広々としたテラスには私たちの他にも何人か恋人達が睦言を交わしているのが分かる。

「ご、ごめんフェイ、わたし、こういうのしたことない」
「知てるよ。.....なら言う通りにするね」
「うん」
「まずワタシの首に腕回して」
「まわして」
言う通りにすると距離は一層縮まった。
「そこからこちを見つめる」
「みつめる」
少し上にあるフェイタンの顔をじっと見つめた。

もともと色の白い横顔が、月の明かりに照らされていっそう青白く、陶器のような美しさを孕んで見える。
綺麗だ。フェイタン「綺麗...」
知らずのうちに呟くと、白い頬に僅かな朱が差した。

「余計なこと言わなくていいね」
「ご、ごめん」
「なまえはあたふたしてれば、それぽく見えるよ」
「ん?それどういう意、」

ちゅ、と唇の脇にキスが落ちる。
私が混乱の坩堝に叩き込まれたのは、それがきっかけで間違いなかった。