「潜入捜査?」

苦々しげな顔で頷いたフェイタンに、私は再度尋ねる。蜘蛛入団一日目の出来事だ。

「潜入捜査って、変装してパーティに忍び込んだりするやつだよね?小説で見た」
「よく知てるね。まさにその通りよ」
「それに私が行くの?」
「安心するね。ワタシも一緒よ」

詳しく聞くと、そのパーティ自体に何か目当ての品があるわけではないらしく、その主催者の男の家にあるお宝を奪いに行くのが目的らしい。私とフェイタンは主催者がパーティを離れないよう見張る係なのだという。


「そういう事ならお任せあれ!ハニートラップ仕掛けろとか言われたら流石に困っちゃうけどね、あはは!」
「お前のどこに甘い罠あるか。見渡す限りひららかよ」
「ほんとフェイタンそろそろ覚悟しといてね。女の子舐めてっと痛い目みるからねマジで」

失礼すぎるフェイタンを一時放置して、マチとパクノダさん、シズクと共に街へ向かった。(シズクとは昨晩初めて会ったけど、クラスにいそうな子で本当にびっくりした)
フェイタンとは会場で落ち合うことになっている。


「わ、ちょっとマチ!見てあの服かわいいよぉー!!」
「ヒラヒラしすぎじゃないかい?」
「あら、女の子はあれくらいの方がいいわよ」
「パクはあれが似合いそうだよね」

こんなふうに女の子同士ではしゃぎながら服を見るなんていつぶりだろう。そのあと四人で入った喫茶店では誰からともなく恋の話になった。

「ねーねー、旅団の中でいいなって人イナイノー?」
「は?いないよ、馬鹿だね」
と真顔のマチである。
「いや知ってるよマチ。皆の関係がそんな浮ついたものじゃないのはもう知ってるんだけど、ここはJKトークを楽しむ場であってだね」
「ンー、あたしはボノかな。話してて癒されるし」
ノッてくれたシズク。それにパクノダさんも続く。
「私はやっぱり団長かしら。男は頼り甲斐がないと」
「クロロさんかぁ...」
「マチは誰がいい?」
「アタシ?.........団長」
「ちょ、パクノダさんとかぶってる!ていうか絶対安牌狙ったでしょ!」
「誰か選べって言われたら皆団長選ぶんじゃない?ーーま、アンタは別か」

ほか二人の視線もこちらに向く。

「あ、私の番?わたしはねー、フィンクスかな」
「えっ、フェイじゃないの?」
パクノダさんが素敵大人ボイスで驚きを露わにする。しかし驚いたのは私も同じだ。
「えっ!何でフェイ?」
「何でって.....アンタらこっちが引くほど仲良いじゃない」
マチも同意する。
「そりゃ友達だもん」
「(そんなレベルは越してる気がするわね.....特にフェイの方は)」
「それにしたって何でフィンクスなんだい?」
「おでこが狭いのと力持ちっぽいところが中々高ポイント」
「なまえって変わってるね」
「シ、シズクもね。なにそれ」
「鰻あんみつ。食べる?」
「やめとく...」
「ともかく、アンタ今の話フェイには絶対.......」

テラスのあちら側を見て固まるマチ。
こちらも買出しに訪れたであろうフェイタンとフィンクスが、ほとんど直立不動で佇んでいる。この距離なら会話も丸々筒抜けだったことだろう。

「あれっ!二人とも奇遇だねー、今ちょうどガールズトークを」
「死ね」
「ぎゃむっ!!」

(マチイイィ、フェイに頭突きされた上に担がれてとんでもない速さで駆け回られた...。なにあれ新しい拷問?)
(自分の色々もアピールしたかったんじゃないの)
(アピール?超ド級のドS野郎だということしか分からなかったけど)
(.....フェイも苦労するね)