「そういうわけで皆さん、幻影旅団期間限定特別救護班班長兼実働隊後方支援担当のなまえです!」 「長いね。」 「幻影旅団のナイチンゲールです!どうぞよろしく!」 フェイタンに後頭部を叩かれたが皆は暖かい拍手で迎えてくれた。クロロさんが紹介を引き継ぐ。 「説明にあった通りなまえには蜘蛛で怪我人が出た場合の治療にあたってもらう」 「アイツの服はフェイの趣味か?」 「俺だ」 「団長かよ!」 服、というのはこのナース服のことだ。 「なまえ、ちょっと」というパクノダさんに付いていくと、あれよあれよという間に着替えさせられた。コスプレみたいで楽しいので特に文句はない。 「ではお集まりの皆さん。知ってる方もいるかもしれませんけど、ここで私の念能力をご紹介します」 「よっ!」と掛け声をかけるウヴォーさんとノブナガ、そしてフィンクスは片手にビールを持っているので何だか大道芸でもしてる気分だ。 「はい、ではここに都合よく満身創痍のヒソカさんがいます」 「満身創痍のヒソカとは」 「くくくっ...マチが急に何も聞かず反撃もせずに殴られろ≠ネんて言うからゾクゾクしちゃったよ◆」 「なまえ、そいつからもと離れるね」 ヒソカさんが椅子に腰掛けたところでさっそく念を発動させる。 「眠りの薔薇籠(イルファンファーレ)=v ヒソカさんの腕の傷を摘むと、スウッと黄色い薔薇が現れた。 ちなみにこの能力名はフェイタンと考えた。 私の考案した「咲け、お花(ライジングフラワー)」は秒で却下された末もげそうになる程鼻をつままれた。私のお鼻がライジングするところだった。 「えー、この能力は痛みを実態化させることができます。花の色が濃いほど激痛で、実態化させたあとも色はどんどん濃くなります」 「最終的にはどうなんだ?」 ノブナガが尋ねる。 「致命傷レベルの痛みに成長したあとは普通に枯れておしまい。30時間くらいは持ちます。あ、ヒソカさん腕どうですか?」 「驚いたね。もうちっとも痛くない◆」 「よかった!ちなみにこれ、直接持つと吸収されちゃうんで、人に渡したりする時は何か入れ物に入れることをオススメします」 私は一度言葉を切る。 マチがもの言いたげな視線を向けた意味はもう分かっているのだ。 「黒薔薇は、心臓の真上に落とせば人を殺せます」 こんな説明ができる程度には色々試してしまった。 自分の願いを叶えるために人を傷つけた私は、もうきっと平凡じゃないし、善人ではない。 一瞬重くなった空気を振り払うようにして、私はにっこり言った。 「ではネクスト!」 とんとん、と助走をつけた余勢をかって跳躍する。 ふわりと前髪が天井に触れた。 「鯨の跳躍=iリトルホッパー)」 高々と上げた踵を大きな釘を打つような気持ちで地面に叩きつけると、床に巨大なクレーターができた。それがさらにひびを産み、皆が座っていたすぐ手前の地面がガタンと沈む。思った。やりすぎた。 「おいコラなまえ!!!」 「ひえー!ごめんなさいー!!」 「お前加減気をつけろって言ったろが!」 師匠は言うまでもなくノブナガである。 地上に降りてからひたすらに平謝りする私の横で、フェイタンが説明を加えてくれた。 「これがなまえのふたつ目の念能力よ。オーラ全てを足に集めて攻撃に特化したね」 「走り幅跳びの応用です!えっへん」 「ただしこいつ硬下手すぎて、これ2回続けると踵粉砕するよ。使わせなくていいね」 「この前1回かかと割れてからこっちビビって2回以上使ってません!えっへん」 「愚図が」「ぐっ」 しかしこの短期間でスゲーなおい!とウヴォーさんに頭をくしゃくしゃにされて嬉しくなる。 「うふふ!じゃあこのまま最後の能力紹介に移りますね!」 「まだあんのか?」 「はい。まあこれは戦闘の役には立ちませんが、私の感情がお花になります。例えば、マチ」 胸元を摘んで持ち上げる。 アヤメが出てきた。 「いつもありがとうの気持ちだよ」 それをマチの胸に押し込む。 「……あんた、馬鹿だね」 マチが僅かに目を伏せた。 「ただでさえ分かりやすいのに、こんな嘘の吐きようもない能力」 「だめかな?」 「……別に。あんたがいいなら私は......ん?」 ぽろりと、マチの胸から花弁が落ちた。 「何ね、これ」 それは拾ったフェイタンの指先にすっと吸い込まれる。何故かだくだくと汗を流すマチの横で、フェイタンがにたぁっとえげつない笑みを浮かべる。 「マチにこんな感情があたなんて驚きね。おいなまえ、マチはお前に」「殺す!!!!」 二人が団員を巻き込んでの本気追いかけっこを始めてしまったので、私の念能力お披露目会の締めはなあなあとなった。 「いい能力だな」 「クロロさん」 「最後のあれは何というんだ」 そういえばまだ考えていなかった。 私は少し考えて、乱闘騒ぎの彼らを見ながら言った。 「……幸福=iシェア)、なんてどうでしょう」 照れが滲んでしまったのは仕方ない。 クロロさんは私を見て小さく微笑んだ。 頭に置かれた手の温かさも、私はきっと忘れない。 「ようこそ、俺達のホームへ」 こうして私の波乱万丈な一週間が始まったのだった。 (ねえなまえ、僕まだほとんど満身創痍なんだけど◆)(あ.....) |