「フィンクスかくまって!!!」
「あ!?お?」

今ひと仕事終えて帰ってきたらしいフィンクスの、丈の長い服の中に顔を突っ込む。

「おいやめろなまえ」
「わー真っ暗ですね」
「当たり前だろ。ひっつくな」
「うんとこしょ」
「前に回ってくんな」
「これで一安心」
「何してんだよお前は…」

呆れたように言いながらも、フィンクスは無理やり私を追い出そうとはしない。

「フェイタンと追いかけっこ」
「ああ、絶の練習か」
「あと10分逃げ切れば私の勝ちなの…!お願い!手伝って!」
「しょうがねぇなぁ」

フィンクスはそう言うと、私に足の上に乗るように指示した。言われた通りにすると、彼は私を足に乗せたまま歩き始めた。

「すごいね、フィンクス」
「お前くらいの軽さなら余裕だぜ」

私は決して軽い部類でないから、すごいのはやはりフィンクスだ。
クラスの男子達のモヤシ感を想像して一層そう思ってしまった。


「あ、フェイ来る」
「へえ。分かんのか」
「オーラ出してくれてるからね!」

視界は真っ暗だが、近くにフェイタンが居るのは何となく分かる。


「……ん、フィンクスか。なまえ見なかたか」
「あ?いやー見てねぇな」
「そか」

にししとフィンクスの服の中でほくそ笑んだ瞬間、
服の上からぐっとお腹に手が回された後、フィンクスが思い切り飛び退いたのが分かった。

「おいっ!何すんだフェイ!!あっぶねーだろうが」
「敵がゆたりした服着てたら中に何か隠してる思うの当たり前ね」
「ほんとに隠してたらどうすんだ!」
「ほんとに隠してるて知てたから手加減したね。なまえ絶あまり上手くないよ。あと足も見えてるね」
「……」

私はフィンクスの服から飛び出して、走った。
2秒で捕まった。






「あーあ…あとちょっとで逃げきれたのになぁ」
「あはは、仕方ないよ」

フォローを入れてくれたのはシャルだった。蜘蛛の男性陣の中では比較的思考がノーマルで、話しやすい相手である。

「フェイタンは蜘蛛の中で一番速いからね」
「え、そうなの?」
「当たり前ね」

自慢げなフェイタン。
ということは先ほどの鬼ごっこもかなり手加減されていたことになる。ショック!

「私も部活じゃ1番だったんだけどなー」
「なまえも速いと思うよ?オレ」
「え、ほ、ほんと?私も旅団に入れるかな?」

その場に居たフェイタン、フィンクス、シャルナーク、そしてクロロさんが一斉に私を見た。えっと固まる私に、クロロさんは真顔で尋ねる。

「なまえ、お前、旅団に入りたいのか?」
「あ……や、ちょっと聞いてみただけです…けど……」
「無理よ」
すかさず断言するフェイタン。
「オマエ居たとこで殺されておしまいね。役にも立たないよ、」
流石にムッとした私は彼に向きなおって指を三本立てた。

「フェイタン知らないでしょ。私、念能力三つも使えるようになったんだよ」


言った瞬間、フェイタンの目が怒りに釣り上がり、私の視界は暗転した。
あ、フェイタンに殺される時ってこんな感じなのかも……。
そんなふうに考えながら気絶した私は、やはりなかなかの強者だと思う。(旅団にいたって、きっと大丈夫…)