「だ、い、じょう、ぶ!!うっ……ふぐ、ぐ」
「そうそう、だんだんコントロールが上手くなってきたよ!」
「え、マチほんと!?っわぁ!!」
「油断すんな!!集中だ集中!」
「うっううう……」
「その調子だぜー、あとはこう念をグッと内側にまとめてこう、ガっと。グッと!」
「フィンクス教え方下手すぎね。なまえ、あと20分耐えろ」


結果、先生はみんなスパルタでした。






「これが、纏……?」
「そうね」

ヒソカさんが言ってた『オーラ』が何なのか、今は分かる。それをようやく身体に纏わせることができるようになったのは、フェイタンの言う20分をとうに過ぎた頃だった。

「それじゃあこのまま、念能力の判別を始めるね」
「あ、変化系とかのやつ?」
「そよ」

頷いたフェイタンにグラスに注いだ水を渡される。
一息に飲み干すとスパンと頭を叩かれた。

「げ、解せん……いたい」
「オマエに飲ます用の水と違うね。アホが。バカが」
「この子とんだ天然だよ、フェイ」
「俺なんとなくコイツの系統分かるぜ」
「おれも」
「何なのみんなして!」

水貰ったら飲めるもんだと思うじゃん!
フェイタンは私に水をくみに行かせ、戻ってくるとその判別方法を説明した。
どうやらコップの水は判別に使うものらしい。
上にちぎった紙を乗せながら言う。


「手でグラスを覆うようにして念を込めるね」
「それだけ?」
「ああ、やてみるといいね」


言われた通り、身体から出るぼやぼやとしたオーラを手に集めてグラスを覆う。

「こいつ当たり前のように練出来てるけど、どういうわけだ?」
「センスがいいんだよ。身体のどの部分にどう意識を集めたらいいかが分かってる」
「スポーツやてたからね。走る時の力の集め方と似てるとこあるよ」

今度は褒められてるみたいだ。ヨッシャーやったるぜー!と意識をグラスへ戻した瞬間、中に入っていた水が爆発した。

「……強化系だね」
「ああ、強化系だ」
「試すまでもなかったな」

私と同様ずぶ濡れになった三人が口を揃えて言う、「強化系」が私の系統なんだろうか。
一人だけ傘を広げて水飛沫を避けたフェイタンは、グラスに残った水をひと舐めして「甘い」と呟いた。

「変化系も兼ねてるってことか?珍しいな」
「ま、これで当面の修行の見通しがついたな」

フィンクスに肩を叩かれる。

「強化系の修行は手ぇ空いてる時に俺達がみてやるよ!な、ノブナガ」
「おう。ウボォーも強化系だが、あいつはちと教えるには向かねぇ」
「ほんと?!ありがとう!!」
「で、変化系統の修行はフェイに見てもらえ」
「わかった!」
「ワタシ厳しいよ。覚悟しとくいいね」
「なまえ、まずは着替えておいで。あんたが一番びしょ濡れだよ」
「わ、ほんとだ!」


マチに言われて部屋へ戻った私は、着替える間もなくベッドに沈んだ。
「…………はあ、すごい疲れるな、これ」
いつも身体が緊張してる気がする。
自分の命のエネルギーが目に見えて、流れているのが分かる。


「あれ、」

ふと、足に巻かれた包帯に紫色のシミが出来ているのに気が付いた。
私の手は操られるようにそのシミに触れ、摘み、持ち上げた。ーーー引っ張られて出てきたのは紫色のバラであった。