「ねー、フェイタン」
「なにか」
「『念』って何?」


なまえの口から出た言葉に、フェイタンは思わず眉をしかめて振り返った。
このアジトへ彼女がやって来て早一月。
だがその間、自分はなるべく念能力や殺しのあれそれをこいつに見せないようにしてきた。……なのに、何故念の存在をなまえが知ってる。


「誰に聞いた」
「ヒソカさん」
「あいつもう害悪でしかないね」
「こらこら」
「……念のことなんて知てどうする」

フェイタンは本を閉じて、ベッドで足の包帯を巻き直しているなまえに近寄った。
するとなまえは顔を上げ、自分の腹部をさすった。

「最近私、自分のお腹の中にフェイタンの命を感じるの」
「言い方」
「生命力みたいなぽかぽかしたものを感じます!」
「で」
「ヒソカさんはこれを、フェイタンの『てん』だって言ってた」

あいつ余計なことを、とフェイタンは舌打ちをした。
よく分からない不思議な能力とでも思わせておけばこいつは追求しないだろうが、中途半端に情報を得てしまえば気になってくるのが人間の性。加えて、こいつはそういう欲求に忠実な奴だった。


「それでフェイタンが仕事に行ってる時にシャルに聞いたんだけど、『そういう特殊な力を念能力っていうんだ』って」

シャル殺す

「そのあとフィンクスにも聞いたら『フェイタンは変化系だぞー』って言ってたから、たぶん系統がいくつかあって」

フィンクスも殺す

「クロロさんは『ハンタークラスは当たり前に念が使える。もちろん俺達も』と言っていたところから考えると、そういう能力は皆が持ってて開花できるできないかっていう問題なんじゃないか………ここまでが私の考察」

「何でそいつらに続き教えてもらわなかた」
「後のことは全部フェイタンに聞け、って全員」

丸投げするくらいならまず情報を渡すな、というフェイタンの苛立ちはもはや向ける相手が多すぎて煙のように分散させる他なかった。


フェイタンはため息をついてベッドに腰掛け、念についての情報を分かりやすく教えてやることにした。
なまえの期待に満ちた目に見つめられると何故か応えなければという気に駆られてしまうことは、彼自身最近気が付いた、早急な対策が必要な由々しき問題である。



「ねえフェイタン」

全てを話し終えた後、なまえはうずうずとした表情でフェイタンを見上げた。(ああ、これだ。だから言いたくなかたね)

「私も、念能力使えるようになりたい!!」
「無理ね」
「クロローー!!!!」
「何故団長呼ぶかふざけるな!ダメて言たらダメね!……ハ?そな目で見てもダメよ。ぜたい許さな」