「フェイタンさんっていうんだ。偽名?ハンター?」
「……お前いつまで寝てるつもりね」
「というか痛くて起き上がれないの。そこで通りすがりの不審者さんにお願いが」
「断る」
「私を助けてください」
「不審者呼ばわりする小娘助ける気ないね」
「フェイさん。フェイタンさん。どうぞご慈悲を」
「嫌ね」
「ケチ!!」

言ったら石を投げられた。ビックリした。

「怪我人にさらに怪我させる気ですかあなた!」
「何が怪我人か。そんだけ口回れば上等ね」
「いたいよー、はずかしいよー」
「ワタシも暇じゃないよ。じゃあな」


そう言って不審者もといフェイタンさんは私の視界からフレームアウトしていった。
私は地面に倒れたまま、うざいくらいに青く突き抜ける空を眺める。背中も頭もさっきほど痛くない。しかしまあ、よく飛んだな。やっぱ近道しようとしたのが行けなかった。
(もしやこの雑木林下ったらあの公園出んじゃね?20分くらいカットできんじゃね?ようっし女子高生のピチピチお肌を守るため!睡眠時間20分アップを夢見て、未知なる土地へいざいかんぎゃやあぁあぁあブレーキィィィ)

「…」


思い返してみればバカな事をした。
自転車点検は一週間単位でやるべきだ。
20分どころか30分くらいカットできたけど、あと30分はここを動けそうにないから結局遅刻だ。
それどころか膝がジンジン痛い。
私のつるつるなお膝に傷がついたのはもはや間違いない。
あーあーあ。石橋は叩いて渡るべきだったし、急がば回るべきだったなぁ。…


ぐいっ


「え」
「…」

腕を引っ張られて、腰に回った腕が私を立たせる。あれよあれよという間に景色はブルースカイから一転黒装束。

「フェイタンさん……戻ってきたの?」
「生死確認しに来ただけよ」
「よかったね生きてて」
「期待はずれね。つまらんよ」
「とりあえず起こしてくれてどうも。つーかフェイタンさんあなた身長」
「来なね。さきのダイブのリプレイ手伝てやる」
「すいませんでした!」
こうして私は不審者さんおお知り合いになった。