「バスの中にいたお前の仲間なら全員無事ね」 「え」 「ワタシの仲間がついてる。救急車も呼んだよ」 死に向かって進んでいると錯覚していたのに、目を開けたらフェイタンが居た。私を背負って風みたいに走るフェイタンの背中で、皆の無事を知った。 「そ、かぁ…」 「……何喜んでるか」 しかしフェイタンの声は固く、こわばったままだ。 「…フェイ?」 「お前の怪我が一番ヤバイて、気付かなかたのか」 微かに震える声が告げる。 「え?やばい?…やばいの?だって全然痛くな」 「今は麻酔きいてるだけね!」 「……フェイ…タン」 「お前の右足、膝から下の骨ぐちゃぐちゃね……、どんな腕立つ医者でももう元に戻せないよ」 思い出したのは、地を蹴って空に飛ぶあの瞬間。思い出したのは、 「いらない!」 「な、」 「皆が生きて居てくれるなら、足なんていらない」 思い出したのは、私の優勝を、自分のことのように喜んでくれた皆の姿。 「フェイタン」 私は、彼の首に巻きつけた腕に力を込めた。 「助けてくれてありがとう」 随分長いこと間を空けて、フェイタンは呆れたようにため息を吐いた。 「やぱり、お前バカだよ」 |