「おい、フェイ。そっち終わったか」
「雑魚ばかだたよ」
仕込み刀の血を払って傘に収めるフェイタン。この地域の山を占領していた山賊から鉱石を全て奪うのが今日の仕事だったが、呆気ないほど早くに済んでしまった。
山賊に奴隷として扱われていたこの地域の住民たちは、山賊が死んだと分かると歓声を上げて転がるように山を下りて行った。

「(これじゃあ慈善活動も同じよ)」
「よし。後はノブナガとシャル待ちだな」
「あいつら……何を手こずてるか」

暫くすると、巨大な袋を背負ってノブナガが、それに続いてシャルナークが林の中から姿を現した。


「遅ぇぞ!待ちくたびれたぜ」
「わりーわりー!」
「途中で面白いもの見つけちゃって」
「お宝か?」
ノブナガは背負った袋を地面に落とすと、興味深そうに覗き込む二人にニヤリと笑いかけた。
落とされた袋の音や、香る血の臭いからそれが死体だと判断したフェイタンは眉を寄せた。

「お宝かもな。――特にフェイタン、お前にとっちゃ」
「何か。ワタシ死体に興味ないよ」
「そう決めつけんな。いやぁ、俺らも見つけた時にはオヤ、と思ってな」
「早く開けるね」
勿体ぶるノブナガの脛を蹴飛ばして催促する。袋の紐が解かれ、中が窺えた瞬間――


「うおっ!」
「危ねえ!」
「おいフェイ!!」


「………誰ね、こんな悪ふざけ思いついた奴」

袋の中に入っていたのは、頭から血を流し、ぐったりと横たわっているなまえだった。