「お前中々イイ足してるね」
「え……えっち」
「そういう意味違うバカ。バネの話よ」

身体能力も高そうだし、少し殺しに慣れれば蜘蛛にも入団できる。一瞬口に出しかけた言葉は頭の中ですぐに打ち消した。―――無理ね。こいつには。


「フェイタン?」
「………あ」
「?」
「そう言えばお前ワタシの顔写真バラまいてるだろ」
「ほっ…ほん?なんのことかのん?」
「口調明らかおかしいね。嘘吐いても良い事ないよ」
「いたいいたい!鼻!つままないでっ」
涙目で鼻をさするなまえの弁明をひとまず聞いてやることにしたフェイタン。

「この前の写真、待ち受けにしてたら友達に見つかっちゃって」
「…この前の写真?」
「ほら」なまえは携帯を開いてその画面をフェイタンに向ける。
アングルは斜め上。眩しげに目を細めてカメラに笑顔を向けるなまえと、……


「これ盗撮言うね。貸せ」
「け、消す気だな!」
「叩き壊すだけよ」
「もっとだめだよ!アホか」


僅かに笑みを浮かべて、なまえを眺める自分の姿。

「フェイタンも笑ってるし盗撮って言わなくない?」
「お前の能天気ぶりに鼻ならしてるだけよ」
「ああ言えばこう言う…」
「大体ワタシ達恋人でもないのに待ち受けにする意味分からないね」
「あー!あたしの携帯の待ち受けランダムだから、ほら」

パカリと音を立てて携帯を閉じ、再度開いた画面には先ほどの写真とはまた違う、今度はフェイタンの知らない人物と親しげに映ったものが表示された。
「ほら、この時のやつは部活の友達と海行った時ので」
「……」
「はででで!!なんで!?すごい勢いで足踏んでるけどどうしたの!!」
「煩い。黙れ」
それはそれでムカつく、とは、思っていようが口にできないフェイタンである。


(フィンクス、ワタシの携帯もランダムにしろ)
(待ち受けか?お前ランダムにするほどフォルダに写真ねーだろ)