「こんちは」

「は」見ず知らずの。いや、全く見ず知らずのガキに声をかけられた。
そいつはにこりと微笑んで会釈をするとすぐに歩いて行ってしまう。
フェイタンは「何だったんだ今のは」と、止めていた足を再び動かし始める。すると前から制服を着た女子学生が二人、フェイタンに気付いたようでこそこそと話し始めた。
(ねえ、もしかして)
(うん。絶対そう…本物だって)
「…?」
フェイタンが眉を眇めるが、二人は気にしたふうもなく、フェイタンの傍を通る際に「こんにちは!」と声を揃えて言った。
バッとフェイタンが振り返ると、何事もなかったかのようにキャッキャとはしゃぎながら去っていく背中。
「……何ね、今の」

という事が、その後も4、5回あった。
だがフェイタンは途中で気付く。
すれ違ったのは皆学生で、女はどっかのバカ女と同じ柄の制服を身にまとい、そしてこの先にはあいつの通う学校があるという事に。

「……原因あいつか」
小さく舌打ちをしたフェイタンは、目的地を旧市街から高校に変更した。








「あれー!フェイタンどうしたの?」
「………何ね、その格好」
「え?部活だよ部活!」

白いTシャツの裾をパタパタさせながらこちらに駆け寄ってきたなまえ。その姿を見て、彼女にぶつけようと思っていた疑問より先にそちらが口をついてしまった。
紺色のブルマからのびやかに伸びる白い足。
膝の絆創膏は取れたらしい。大した傷にもなっていないようだ。

「今時ブルマとか古いよねー」
「…」
「フェイタン?」
「あ…、ちで誰か呼んでるよ」
「ん?あ、部長だ」

同じような服装の集団に向かって「今行きまーす!」と声を張るなまえ。

「ごめん!あと一回計測したら終わりだから、ちょっと待ってて」
「嫌よ。帰るね」
「そう言わずに!一緒にかえろ!」
「……あまり遅かたら帰るからな」
「はーい!」
にこりと嬉しそうに笑ったなまえはポニーテールを揺らしながら集団の方へと戻っていった。
フェイタンは校門に寄り掛かりながら、広々としたグラウンドと、様々な活動をする生徒達を眺める。(よくやるね…。スポーツより殺しの方が俄然面白いよ)
そんな中に、砂場の近くで屈伸をするなまえを見つける。
他にする事も無い為、彼女を眺めた。

しばらくすると砂場から距離を取り、笑顔で手を上げる。それに応じるのは砂場でメジャーらしきものを手にしている二人だ。
(成程。計測てこれのことか)


助走をつけたなまえは、1、2、3、で空に駆け登った。
フェイタンは思わず目を見開く。
予想を上回る跳躍力だったからだ。
華麗に着地したなまえの横で、その友人らしき二人が手を叩いて大喜びしている。彼らとハイタッチしながら不意になまえがフェイタンの方へ顔を向けた。
(イエイ!)
握った拳をこちらに突き出して笑顔を向けるなまえは、同時に砂に足を取られて転んでいた。
顔面を砂まみれにしてむせている。

思わず、噴き出してしまたことは、内緒ね。