ヒソカさんの言う8分の意味が分かったのは、あれから8分経ってからの事だ。

「あ……フェイ!」
「……」

大きく手を振ると、眉をしかめたフェイタンはこちらへ歩いて来た。
私の足元から頭の先に視線を移して、舌打ちする。

「何捕まてるか。お前ほんとノロマね」
「うっ」
「ヒソカどこね」
「え、帰ったけど」
「チッ…(逃げられた)」
「ていうか、た…助けに来てくれたの?」

マスクを引き上げたフェイタンの動きが一瞬止まったように見えた。
しかしそれも気のせいだったらしく、すぐに「ハ?」と嘲笑を交えた疑問符を投げられる。

「たまたま通りかかただけよ」
「んなアホな」
「そしたら見たことある雌豚が自分縛て悦んでたね。ホントだたら通報してるとこよ」
「あたしのことか!ちがうから、これはヒソカさんが」

私の台詞のどのワードが気にくわなかったのか、フェイタンの眉がぴくりと動いた。

「…ヒソカ、さん?」
「え?」
「何であいつには"さん"付けするね」
「え、だって年上だし」
「…」
「…」
「……え…ええ!もしかしてフェイ」
「言うね。ワタシの何見て年上じゃない思たか」
「ちょ!傘!傘からの刀!?あぶないからしまってー!」
「五月蠅いね。黙るいいよ」
「!」

フェイタンが刀を振り上げる。お客さんの誰かが悲鳴を上げた。
パキィンと小気味良い音がしたかと思うと、手錠のチェーンの部分が見事に切れていた。一瞬の出来事に私も周りも目が点。

「何ビビてるか」
「と…とれた」
「出るよ」

さっさか歩き出してしまうフェイタンの後を慌てて追う。するとビビりきったウェイターさんにお勘定を要求された。……あいつ全然紳士じゃないな!!