『何でお前がヒソカといるか。というか今どこね。今日は部活大会だ言てなかたか。アレ嘘か殺すよ』
「…そ、そうアルヨー……なまえアルヨー!!!」
『五月蠅いねオマエ。あとそれワタシの真似か』
「うむ」
『止めるね』
「…うむ」

あ、あー…びっくりした。

初めて名前呼ばれた。

(それに…覚えててくれたんだ)
本当は今日は陸上部の大会があったのだ。しかし昨日の雨の所為でグランドのコンディションが悪く延期になった。
――前に会ったのはあの夜の日。その時に話した事をまだちゃんと覚えていてくれてたなんて、思いもしなかった。(フェイは相槌すら打たないし)

「驚いたね。彼と知り合いかい?」
「あ!ごめんヒソカさんっ」

慌てて携帯を返すと、ヒソカさんはそれを耳に当てて暫くニヤニヤと黙っていた。


「クックッ!いやボクはヒソカだよ。まさかキミがねえ、これはまた面白い……イテテ、はいはい」

鼓膜破けちゃうよ、とぼやきながら再度手のひらに戻ってきたヒソカさんの携帯。私はもう一度それを耳に当てた。

『逃げるね』
「え?」
『ささとそいつから離れろ言てるよ』
「でもまだジュース……ヒソカさん?」
「何だい?」
「これは……その、趣味ですか」
私は手首とイスの肘掛けとを繋ぐ手錠に目をやった。
「好きにとらえてくれていいよ」
にこ

「…?…、……っふぇ、フェイィィイ!!捕まったぁぁあ」
『愚図が』

な、なにこれとれない!
ガチャガチャ引っ張ってみるも手首が痛くなるだけだ。
あ、お店の人からの視線も痛い!

「せっかく面白い暇潰しを見つけたんだ、しっかり堪能しなくちゃね◆」

あれ何か今ヒソカさんの語尾に変なものが見えた気が…。気のせいだ。

『オマエみたいに警戒心ない愚図女は食われて悔いればいいよ』
「そんな!フェイー!」
『ノロマ』

ブチッ…ツーツー

さ、最後まで悪口…だと。

私は項垂れそうになるのを堪えて恐る恐る顔を上げると、相変わらずの笑顔を顔に張り付けたヒソカさんと目が合った。

「8分、かな」
「……何がです?」
「さあ?」

(私の寿命…とかじゃないよね)