「よーし。やっと全員分のドリンク作り上げられたぞー」
「ようやく終わったのね。遅くてイライラしちゃった」
「カルシウムの足りないそんな君にはハイこれ!ぎゅーにゅーっ」

私の手から牛乳瓶を叩き落とした亜里沙は、ニヤリとあんまり可愛くない笑みを浮かべる。


「私をここまで馬鹿にしたコケ、払ってもらうわよ!!」

「…コケ?」

「…」

「…」

「私をここまでコケにしたツケ、払ってもらうわよ!!」

「な、何事もなかったかのようにキミ!」

真っ赤になった亜里沙は傍にあったドリンクを自分の頭にひっかけて、悲鳴を上げた。

「どうした!!??」
「何かあったか!?」
「バカ!じゃねえ、ナマエどうした!!」

「み、みんなっ急にナマエちゃ「キャー!!!!」うるさっ」
「キャーーー!!」
「ちょ、」
「キャー!!!」
「もう何だよお前うるっせーよ!!」
(そうよ!アンタの所為で私の悲鳴かすんじゃったじゃない!!)
「や、だって、キャー!!やばいっ、キャー!!」
「せやから何がヤバイねん!」
「見てこれっ」

亜里沙の足元にビショビショになって転がっていたチラシを、大興奮のナマエは拾い上げた。そしてかかげる。
そこにいたのは真っ白いご飯さんと、その上に艶やかに光る黄色いアイツ。


「スキノ屋のたまごかけごはん定食300円から200円に割引されてるよッ!!キャー!!帰り寄んなきゃっ」
「「「「そんだけかよ!!」」」」
「貴様らボンボン共には分かるまいこの喜び!いいもんっ私亜里沙ちゃんとだけ喜び分かち合うから!」
「ちょ」
「アンタらさっさと練習戻ってよね!」

亜里沙の肩を押しながらシャワー室の中へ入る。
メンバーのブツクサした声を扉のあちら側に聞きながら、私は彼女の耳元でささやいた。

「ふふっ…ごめんね」
「…」


亜里沙はサッと脳裏にナマエの妖しげな笑みを思い浮かべた。――まさかこいつ、私のたくらみに気付いてこんな阻止を?
だとしたら…こいつただのバカじゃない。
私はとんでもない奴を敵に回してしまったのかも…―――

「あー、下着透けちゃってる」
「は?」
「ごめん。私が指摘しなきゃ亜里沙ちゃんも恥ずかしがってドリンクかぶったりしなくてすんだのに、ね」
「…」
「だめだな私、人の間違いをすぐに指摘しちゃう癖直さないと。…また亜里沙ちゃんみたいにすごい照れ隠しに出る人に会ったら大変だもんね」
「…」
「でもテニス部の奴らに亜里沙ちゃんのスケスケの下着見られないで済むように努力したから今回の件は水に流してくれ!どうせシャワーあびることだし。うまい!わははは」
「……」
こいつ、生粋の馬鹿だわ

(あー卵かけごはん食べたい)
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