「はんはんはーん、はんはんはーんっ、じんぐるてぃんぐすららーらん」
「(なぜフランダースの犬…)」
「ミルク色の夜明けーっ見えてくるまっすぐなーみち、待ってーてごーらーんんんん、ほーらっあの子がかけてくるっ」
「(うわぁああああ!!!)」
「(ハイジとごっちゃになってる!!)」
「(誰かあのメガネ止めてきてーっっ)」
部室から聞こえてくる大きすぎかつツッコみどころありまくりな鼻唄のせいで全く練習に集中できない部員達。これはもはや鼻唄の領域じゃねえ。
ラケットを折りそうなほどに苛立ちながら跡部が部室に飛び込んだ。
「おいテメェ!!うわ!」
「あ、ナスボっちこんにちわ」
「そのあだ名止めろ!というか何してんだ!アーン?」
「ネロごっこですけど」
私はジャージの上にピンクのジャケットと青い帽子を被って、手に持っていたドリンクを振った。ここはヴァリアークオリティ。
「扱き使われる時にこれやるとモチベーションあがるんだよね」
「それは暗に俺がこきつかってると、って何だその手の動き!早すぎて見えねぇ!」
「フフフ。あ、そうだ」
私はドリンクを振るのを止めて、傍にあった袋からあるものを取り出した。
「じゃあほら、跡部にはこれね」
「アーン?……何だこれ」
「アロアのコスプレ」
「俺は練習に戻る」
「えー!いいじゃんこれかわいいじゃん!白い前掛けと被り物。ほら、アロアの大好きないーちーごーあーめ!アハハウフフ。もあるよ。あれ?跡部ー?」
(どうだった?跡部)
(悪いが……俺の手には…負えそうにねえ)