「無駄が嫌いな、忍足のために、腹筋しながらの、話し合いでしょ?、それで、今何回かな?」
「知るかっちゅうねん死ねやボケ」
「えー、急に口悪ぅい!」
「ほんま自分頭ん中どうなっとんねん。ちゃんと脳みそ詰まっとるんか」
「詰まってるよ失礼な」


想像以上やった。
想像以上に、ミョウジアホの子やった。

「あーー俺『……ッ淫乱が』とか言うてもうたやん…もう恥ずいわ死ねるでこれ」
「大丈夫大丈夫、はずかしくないよ」
「慰めんなや!」
「でもインランってどういう意味?」
「ほんで知らんのかい!!あ、あかん血管キレそ」
「あ、ちょっと手離さないでよー」
「もうええねん腹筋は」
「あと5回!あと5回でたぶん100回だから!」
「絶対そんなやってへんけどな」


仕方なく残り5回を付き合ってやり、満足したらしいミョウジは腹を伸ばしながら起き上がった。
「はい。次は忍足の番だよ」
もうどうにでもなれ。
……ほんで、お前抑える時胸当たってんねん。当ててんちゃうやろな。ちゃうやろな、うん。腹立つから教えんとこ。

「いっち、にー、いっち、にー」
「……」
「ねー、忍足」
「……何やねん」
「忍足好きな子いるー?」
「なんで今そんなん聞くねん。どうでもええやろ」
「反抗期の息子か!」
「お前の息子だけは、死んでも嫌や」
「わたしはねー、えへへ……いるよっ」
「(すこぶるどうでもええ)」

それからミョウジはその想い人について、長いことひとりで延々と喋り続けていた。逆らう者全員カッ消しそうな鋭い瞳が格好いいとか、でもたまに甘々なところがいいとか、抱きしめてくれる時にちらりと見える鎖骨が好きとか、延々。

俺は無心で腹筋をしながら、ミョウジが惚気ける時のふわふわとした言葉遣いや、優しく緩む瞳や、その幸せそうな表情を時折見つめ、自分のやっていることが馬鹿らしくなって止めることにした。

大人しく腹筋してる方がマシっちゅうもんや。
コイツは数える気皆無やけど。まああったとしてもイチとニしか数えられへんからどうせ分からんようなってしまうやろけど。ほんとバカ嫌やわ。

「でね、そういうところ全部ひっくるめて、だいすきなの」
「もーええもーええ、聞いとるたけで幸せ腐りしそうやわ」
「腐り方の中ではハイジャンル…」

どうせピンク色のカビでも想像しているんだろう、アホなミョウジを押しのけて立ち上がる。
「イテ」
「あんな、お前アホやから教えたるわ」

そいつの腕を掴んで引き上げつつ、俺は心の中で亜里沙に謝った。
堪忍なぁ、俺もあかんかった。向日も宍戸もスマン。


「そんなに惚れとる男が居るんやったら、知らんヤツにほいほい付いてくなドアホ!」
「えっ」
「俺がソイツやったら俺のことなんか八つ裂きにしとるで」
「え……でも、忍足は知らん人じゃ」
「男は皆狼や!!ほら復唱!サン、ハイ!」
「お、オトコはみんな狼や!」
「声が小さいもう一度!」
「オトコはみんな狼や!!」
「そゆことや。覚えとけ」

それだけ言って体育倉庫を出る。中に残るポカンとしたミョウジを思うと、少しスッキリした気持ちになった。



「…………なあ侑士」
「あ?何やがっくんか。どないしたん」
「さっきよ、……その、あいつとお前が汗だくで体育倉庫から出てくんの見ちまって」
「!」
「ミョウジに聞いたらよ」
「……アイツが、何やて」
「すげえ辛そうに腹撫でながらよ、男女関係についての熱い談義してた≠チて」
「ほんまアホの極みやなあのアホが!!!」
「な、なあ、お前らもしかしてその、ごにょごにょ……を」
「してへんからな!!」
「えっ、あ……そうなのか?」
「あたりまえやろ!あんなのとしてたまるか!!」
「なんだよクソクソ侑士ー!でも安心したぜ。……あれ?でもじゃあ何を」
「…………ふ……っきん」
「ファッキン?」
「ちゃうわ!!……何でもええやろ。ほらもう体育終わるで!戻らな!じゃあまた放課後なー」
「あ!おい、侑士ぃー!」

(襲おう思て腹筋しかできなかったとか、間抜けすぎて言えるかい)(てか意味わからんやん。はー、早退したろかな)
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