「ね、寝ぼけてんじゃねェよてめー!!」

衝撃がデカすぎて声ひっくり返っちまった。しかしミョウジは大欠伸をしながら目をこすっている。
ってか寝ぼけるとかのレベルじゃねぇだろ!


「……きのぉさぁ」

「お、おう!」

「…ぼひゅ………………と電話きて、たのし、かった。ほで……1じかん、ねた」


途中、ぜってー寝てるだろコイツ!みたいな間があったが、文法はとんでもないながらもとりあえず何とか辛うじて状況は理解できた。
誰かと長電話してて睡眠時間が1時間だとこうなるようだ。でも、ボヒュ、が人なのか効果音なのか、はたまたイビキなのか!分からねえ!


「ってオイ!そこ宍戸の席!つかむしろ宍戸座ってっから!宍戸に座ってっからお前!イスじゃねーよ!」
なんでもとから座ってる奴の上に座れんだよ!
どんだけ寝ぼけてんだよ!つーか、つーか!

「………」

「…ひしど」

「し、ししししし、しし宍戸だオレは!げ、げ、激おも、だから早くどけ!」

お前は何で赤鬼みたいになってんだよクソクソ亮ォォォ!!

「……わぁ、った。…ししししし……しし………………すー」

「寝んな!!!」

赤鬼の如く赤面してる宍戸は「どけ」とか言いつつ無理矢理退かそうとせずに固まっているから、仕方なく俺はミョウジの肩を掴みユッサユッサ揺さぶった。


「…んー、ふぁ。……おはよ、がくと」

暫くしてようやく意識が定まったらしいミョウジが、寝ぼけ眼でほにゃりと俺に微笑みかける。つーかお前やめろよ何で名前とか急に呼びだすんだよ死ねよしね。

「おい向日、お前顔赤いぜ。激ダサ」

「その前に鏡見てくんね?俺お前にだけは言われたくなかったわ。」

「あ。いけね、隊服着てきちった…」
宍戸椅子から立ち上がり、おもむろに黒いコートを脱ぎ出したミョウジは、鞄を机の上に置いてその中にそれを詰め始めた。

「って無理だろ!!いい加減起きろよおい!」

見かねたようにミョウジの隣の席の女子が席を立ち、ミョウジから服を取り上げた。

「フツーに考えて畳まなきゃ入んないわよ!」

「……あー」

「なあ。コレ落ちたんだけど」

今度は宍戸の隣の席の男子が、床に落ちたフランスパンをミョウジに差し出す。
コートはすっかり女子に託して受け取ったフランスパンをかじり始めるミョウジ。

「お前落ちたもん食うなよ。激ダサだぜ?」

顔の赤みが引き始めた宍戸。

「だいじょうぶ。お腹つよいから」

「ったく」

「コート入ったわよ」

「さんきゅー」

「お前どうすんだよ、そのかっこ。もうチャイム鳴るけど」

「………ん?あ。ここあたしの席じゃない」

「「「「「今頃かよ!!」」」」」

「てか…あたしパジャマだ」

「「「「「今頃かよ!!」」」」」
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