「がっく…、ひっく、亜里沙、っぅ、ナマエちゃんになんかっしちゃ、た…のかなぁ」
「亜里沙が何かするはずねーだろ!クソクソ!全部ミョウジが悪ィに決まってる!」
「せやな…。ミョウジのやつ、ただじゃおかんで」
「安心しろ、亜里沙。俺達が護ってやるからな!……俺にいい考えがある。」
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放課後練の後、泣く亜里沙を囲んで皆で相談した結果、朝練の前にアイツの机の上に菊の花を置いておくことにした。
実行は勿論言い出しっぺの俺。
一昔前のイジメみてーでちょっとやだったけど、でもミョウジも亜里沙を苛めてるから、自業自得だ。
「ミョウジもう来てっかな」
「さあな」
宍戸と教室に戻りながら、俺は内心浮き足立っていた。(もしかしてアイツ泣いてたりして。ざまーみろ)
宍戸は、ミョウジが編入してきた時からアイツに気があったみたいだけど、今はさすがにもう嫌いになったはずだ。やっぱ虐めなんてするきたねー女、顔がよくたって誰にも好かれねーよな。
――ガラ
「あ!向日君宍戸君おはよーっ」
「見てよミョウジさんの机!花瓶置いてあんの、うける〜」
「あ、それオレ!俺が置いたんだぜ」
「そーだったのかよ!ナイスじゃん向日」
ほら、クラスメイトの奴らだって誰も批判してこねーだろ?
くるりと室内を見渡したがミョウジの姿はまだない。(来てねーのか。)
窓側に座っていた亜里沙が可愛らしく駆け寄ってきた。
「が、がっくん…やっぱりよくないよ…やめようよ」
「亜里沙は優しすぎだって。アイツにはこんくらいが丁度いーんだよ」
その時タイミングよくクラスの扉が開いた。
「!!!!」
驚愕したミョウジ、ではなく、俺達。
「………ミョウジ、さん?」
「……んぉ?」
「な、なんだよ…おまえのそのかっこ…」
「………あぇ?」
ファンシーな動物達(ここから確認できたのは、舌を出すウサギと、踊る……サイ?)の柄のパジャマ。
氷帝女子着用必至のスカート。
場違いに重々しい黒いコート。背中には金色の文字で、……よめねェや。
肩にかけている学生鞄からはみ出すフランスパン。
なぜか手に握っているフォーク。
「………」
生まれて初めて、絶句、した。おれ。