ベランダごと教室の壁が吹っ飛び、周囲が粉塵に覆われる。
死神の装束を纏った俺は、抜き放った斬魄刀を今一度構え直した。後ろには俺が防いだ虚閃の余波を受け、吹き飛ばされて気絶する桜子の姿がある。



(まさか、こんなところに破面が現れやがるなんて)

「何の真似だよ、グリムジョー!」
「ーー退け、黒崎」
「退くかよ。お前こそ、なまえから手を離せ」
「やめろ一護!」
俺同様死神化していたルキアが、鋭く言った。

「あまり刺激するな。ここは学校だぞ!
ーー死人が出る」

俺は固く奥歯を噛む。
少しでも霊圧のある人間はその光景をまじまじと見つめ、そうでないものは最早何が起こっているのか分からずただ混乱しているようだ。
確かに、こんな状況でまともに戦えるはずもない。
グリムジョーに捕まっているなまえのことも、このままにしておけない。

「……グリムジョー。お前、俺を殺しにきたんだろ。場所を変えるぞ」
「てめえは殺すが……、それより、その女だ」
「ーーー桜子?」


ふと、違和感に気付く。それはルキアも同様だったらしい。
片腕でなまえを抱き寄せるグリムジョーの半身は、後方に引かれている。まるで、なまえを守っているような姿に見えるのだ。
なまえはすっかり身をまかせるように、グリムジョーにしなだれかかっている。


「……テメェはやっぱり塵(ゴミ)だな、黒崎」

グリムジョーはなまえを抱えたまま、真っ直ぐ鋭い視線を俺に向けた。

「ーーこいつから、腐った匂いがしたことが、一度でもあったかよ」


胸を射抜かれたように、全身が硬直した。
ようやく分かった。
グリムジョーは、なまえを護っているのだ。
人間を塵だとしか思っていなかったはずのグリムジョーが、ーーいや、こんな場所で虚閃を放つくらいだ。今でもそう思っているだろう。
なまえだけが、違う。


「ーーなまえは、お前の、何なんだ。グリムジョー」
ほとんど無意識に訪ねていた。
グリムジョーは答える。
刀を抜き放ち、苛烈に笑って。

「ーー別格≠ノ、決まってんだろ!!
 ここまでこいつを苦しめ抜いたテメェ等には、それ相応の死をくれてやる!」
「待って」

グリムジョーの前に立ち塞がったのは、井上だった。

「その前に、なまえを治させて」
「、誰がテメェらなんかに」
「校舎裏で」

「見たの。あなたがなまえを助けてたところ。
あたしね、あの時なんにもできなかったこと、ずっと後悔してた……」

ぽろぽろと、井上は涙をこぼした。

「ごめんねって、言いたいの」

その時、グリムジョーの袖をなまえが引いた。

「グリム、ジョー」
「……」
「……いたくてしにそう」
「ーーチッ!」

グリムジョーが刀を鞘に戻す。俺たち死神に、背を向けて。
なまえを両腕で抱えて、井上に向き直る。

「治せ」
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