徹底的にやらなければ気が済まなかった。あのひとの視線が、あの女にばかり向いていると気付いた時。殺意すら湧いた。
「…、何よ」
一度は苦しみの底に突き落とした優越感が勝ったが、あの女が私に屈することは無かった。それどころか、日に増して瞳に光が宿り始めているような気もする。私は、それが堪らなく鬱陶しかった。
「あ、なまえちゃんだぁ」
「…桜子」
「今日も一日お疲れ様!……なんか、痣減ってない?」
「おかげさまで少しの戦闘能力まで身についちゃった有難う」
「…っ馬鹿にしてんの?」
「別に」
「…また痛い目みたくなかったら私に逆らうなんてしない方が身のためだと思うけど?」
「あたしが身の心配して動いてたら、とっくに折れてる」
じゃあね。放課後の教室から凛とした表情で立ち去るなまえ。
私は立ち尽くしながら、言いようのない敗北感に拳を固めた。許さない、まだ…苦しんでもらうんだから。
***
翌日、教室に一歩足を踏み入れた私をタツキの左手が迎えた。突然の衝撃に耐えられず、私は後ろに倒れた。
「…タツキ?」
「いい加減にしろよ、なまえ!お前最低だぞ!」
タツキをこんなに怒らせる程のことが桜子に起きたのか。
私は目だけで桜子を探す。ありゃ、足にギプス?そんだけ?
「骨折がどんだけ痛いと思ってんだ!階段から、突き落とすなんて」
「誰が?」
「しらばっくれる気かよ!」
「だってどんなに言われてもあたしはやってないし」
この一言は怒りに滾ったクラスにとっては火に油だったようだ。次々に殴りかかってくる彼らを見て久々に冷や汗をかいた。
ズンッ
全身に掛かる、冷えた重たい空気。
「一護、破面の霊圧だ…!」
「十刃かよ…一体どこに」
ルキアと一護の会話が少しだけ耳に入ってくる。ああ、これが霊圧。
グリムジョーの其れに充てられて私に殴りかかろうとしていた生徒達はバタバタと意識を失わせていった。
「…さんきゅ」
小さく小さく呟いた声は、果たして彼に届いているのかな