髪の湿気が無くなったのを感じてグリムジョーにブラシを手渡した。昨日からジャージのポケットに入れっぱなしだったようだ。

「はい、ついでにお願いします」
「甘えんな」

面倒くさそうに言いながらもやってくれるグリムジョーってやっぱり優しいな、なんて思いながらうとうとする。
まどろみの最中でグリムジョーの声は穏やかに耳に響いた。

「お前の髪は黒いな」
「んー…グリムジョーは水色だよね」

空みたい。


「ねえ、グリムジョー…」
「あ?」
いつもどこかで、聞くのを怖がってたこと、――今なら聞けそうだ。
私は空を仰ぎ見ながら、静かな声で彼に尋ねた。



「この復讐が終わったら、グリムジョーはどこかに行っちゃうの?」



風が吹き抜ける中、私は後ろからグリムジョーの声が返ってくるのを待った。その沈黙は永遠にも感じられたし、一瞬のような気もした。

「…さあ、な」
「…」
「もしそうだって言ったら、お前…どうすんだ」
「あたし…は」

――どうするんだろう。
復讐をやり遂げてもとの生活に戻ったとしたら、あたしは


「どうもしないよ。グリムジョーと会う前の生活に戻るだけ。朝起きて学校行って、授業受けて、たまにお昼寝して、そんで家に帰ってテレビ見て。なんも変わんない」
「…そうかよ」
「うん。だからグリムジョーも安心していいからね!あたし一人でも平気だし、それに」
「バーカ」
「っ」

「それが一人でも大丈夫って言ってるやつの面かよ」


グリムジョーから私の顔なんて見えるわけないのに。
――どうして分かっちゃうんだろ





「っ、たぶん…だめ」


ひとりで居られるはず無い。何にも変わんないはず無いよ。

「きっと…物足りなくなる、寂しくもなる…っ」
「だったら言え、お前は俺にどうして欲しい」
「…


ここにいてほしい、ずっと、傍に居てほしい」

言い切ったら、後ろから思い切り抱きしめられた。
変な意地張るんじゃねェよ、バカのくせに。疲れたような、でもどこか安心したような響きを含む声が耳元で囁かれた。

「おい、なまえ」
「?」

「この先…テメェの生活も夢も、人生も…――未来全部、俺によこせ」

初めから、離す気なんざ無かったけどな。
目を丸くして言葉を失うなまえの唇をかすめとった。
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